近畿大学(近大)、稲畑香料、三生医薬の3者は8月5日、クローブや黒胡椒などに含まれる香り成分「β-カリオフィレン」(BCP)を吸入することで、ニコチンによる硬化や惰弱化を抑制する強い血管保護効果が発揮されることを、マウス実験によって明らかにしたと発表した。
同成果は、近大大学院 農学研究科の岸千尋大学院生、同・東原真代大学院生、同・森山達哉教授、稲畑香料、三生医薬の共同研究チームによるもの。詳細は、臨床および基礎医学と薬理学に関する全般を扱う学術誌「Biomedicine & Pharmacotherapy」に掲載された。
BCPは、フトモモ科の樹木であるクローブから抽出した精油に含まれる、天然の揮発性(香り)成分であり、近年人気の「カンナビジオール」の代替品として、経口摂取により抗炎症作用や抗酸化作用を示すことが報告されるなど、機能性食品成分として複数の効果があることが知られている。
そこで研究チームは今回、ニコチンで誘導した血管損傷に対し、吸入したBCPが及ぼす影響について検証を行うことにしたという。
マウスによる実験の結果、BCPを吸入した個体において、血液や血管でBCPが検出され、ニコチンによる動脈の硬化や脆弱化が抑制されることが明らかになったとする。
これまでにも、BCPを経口摂取することによって、抗炎症作用や抗酸化作用を示すことは報告されていたというが、吸入による効果が証明されたのは、今回の研究が初めてのことだと研究チームでは説明しており、今回の成果により、血管疾患予防において「BCPの吸入」という新たな経路が示されたとしている。
なお、今回のマウス実験で用いられたBCPの安全性や有効濃度から、ヒトでも同様の効果が期待されるため、今後、実際にヒトを対象とした臨床研究を進める予定だという。