TXOne Networks Japanは8月9日、日本市場への本格参入と今後の国内における事業戦略を発表する記者説明会をオンラインで開催した。

TXOne NetworksはトレンドマイクロとMoxaが2019年6月に設立した、ICS(産業制御システム)やOT(Operational Technology)機器のサイバーセキュリティ・ソリューションを提供する企業だ。日本法人であるTXOne Networks Japanは2022年4月15日に設立された。

説明会では、台湾から来日したTXOne Networks CEO(最高経営責任者)のテレンス・リュウ氏が日本市場への期待を語った。会の冒頭でリュウ氏は、業務のデジタル化が世界的に進んだ結果、製造業のOT環境にもITが用いられるようになり、ランサムウェアによるサイバー攻撃の標的になってきている一方で製造業におけるセキュリティ体制が十分でない点を指摘。

そのうえで、「日本のデジタル化は黎明期であり、これから進化を遂げていくと考える。コンピューティングの分野では仮想化やエッジコンピューティング、機械学習などが注目されている。接続性において、日本はTSN(Time-Sensitive Networking)、5G、Wi-Fi 6/7などパイオニアの分野が数多くあり、OTのサイバーセキュリティはさらに重要になる。自動車・電子機器・半導体・製鉄といった日本を代表する製造業のリーダーとともに、日本のOTサイバーセキュリティのベストプラクティスを構築していきたい」とリュウ氏は述べた。

  • TXOne Networks CEO(最高経営責任者) テレンス・リュウ氏

    TXOne Networks CEO(最高経営責任者) テレンス・リュウ氏

【関連記事】
≪国内の企業・組織の63%がサプライチェーン攻撃を経験-パロアルト調査≫
≪スマートグラスで製造現場のDX実現!欠かせない3つの検討ポイントとは≫

日本における事業戦略については、TXOne Networks Japan 代表執行役員社長の近藤禎夫氏が説明した。同社は今後、「ダイレクトセールスの強化」「パートナーエコシステムの確立」「日本企業の安全なサプライチェーンの実現」を進めていくという。

ダイレクトセールスの強化について近藤氏は、「国内の事業展開において、まずは製造業を中心に製品展開を進めていく。お客さまに直接対応する組織を強化して当社のOTサイバーセキュリティにおける知見・経験を伝え、日本の製造業のお客さまの声を直接聞き、日本特有の課題を解決するセキュリティソリューションを開発・提供していきたい」と語った。

  • TXOne Networks Japan 代表執行役員社長 近藤禎夫氏

    TXOne Networks Japan 代表執行役員社長 近藤禎夫氏

2020年5月に成立した「経済安全保障推進法」では、サプライチェーンの強靭化およびインフラの安全確保が柱に掲げられた。また、経済産業省は「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」の初版発行を2022年8月頃に予定しており、近藤氏は「各業界・業種におけるサイバーセキュリティ対策が一層重要になる」と見る。

TXOne Networks CEOのリュウ氏は「SEMI Taiwan」でサイバーセキュリティ・コミッティーのグループリーダーを務めているほか、半導体製造業界向けの「E-187」というセキュリティ規格の策定にも関わっており、OTのサイバーセキュリティについて多くの知見を有している。そうした同氏の知見や経験に基づくノウハウを、TXOne Networks Japanから国内企業に広く伝えていくという。

パートナーエコシステムの確立にあたっては、トレンドマイクロの販売網を活かした販売方法を確立し中堅・中小企業への製品提供を進めるほか、ICSやOTの知見を持つプロフェッショナルパートナーとの新たな協業モデルを策定することでエンタープライズ領域の販売も推進していく。

また、国内のコンサルティングファームとも連携し、すでに海外では実績のある顧客の経営課題解決につながる協業活動も始める。

  • TXOne Networks Japanが進めるパートナーエコシステム構築

    TXOne Networks Japanが進めるパートナーエコシステム構築

セールスとパートナーとの連携の強化に加えて、OT環境の特性にフィットした「OTネイティブ」な製品の提供、サイバーセキュリティの最新技術やグローバル事例の提供、研究開発活動などを通じて、TXOne Networks Japanは日本企業の安全なサプライチェーンの実現を目指すという。

「現状では、ゲートウェイの設置やネットワークの可視化など、どちらかというとITのアプローチでOTサイバーセキュリティに取り組む企業が多いと思うが、当社では機器に近い領域で利用されるOTに特有なプロトコルをコントロールする製品を揃えている。それらをパッケージで提供するだけでなく、OTサイバーセキュリティの専門家として製品導入前のアセスメントも併せて行うことで、日本企業のサプライチェーン強靭化を支援したい」(近藤氏)

同社では、ネットワークセグメンテーションや脆弱性対策、エンドポイントプロテクションのセキュリティ対策ソフトウェアのほか、ウイルスの検知・駆除ツールなどの製品を提供している。

  • TXOne Networks Japanが提供するOT向けセキュリティ製品

    TXOne Networks Japanが提供するOT向けセキュリティ製品