富士通は8月9日、ローカル5G(第5世代移動通信システム)ビジネスに関する取り組みについて記者説明会を開催した。本稿では、特にサステナブルな社会の実現に資する同社の実例を紹介したい。

富士通のこれからの10年、テーマは「サステナビリティ・トランスフォーメーション」

富士通は現在のところ、経営の優先課題を「サステナビリティ」としており、今後の10年間に向き合うべき最重要テーマを「デジタルイノベーションによるSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)の推進」に据えている。社会と企業の双方が持続するためには、デジタルテクノロジーのイノベーションが必要としている。

  • 富士通は今後10年間でSXに取り組むという

    富士通は今後10年間でSXに取り組む

説明会に登壇した、富士通のネットワーク&セキュリティサービス事業本部で5G Vertical Service事業部長を務める森大樹氏は、SXの遂行に不可欠な要素として「データ」と「デジタルテクノロジー」の2つの軸を紹介した。これに基づいて、自社のSXに積極的に取り組むだけでなく、顧客企業のSXも支援していくとの意気込みを見せていた。

  • 富士通 ネットワーク&セキュリティサービス事業本部 5G Vertical Service事業部長 森大樹氏

    富士通 ネットワーク&セキュリティサービス事業本部 5G Vertical Service事業部長 森大樹氏

森氏は今後10年間のSX推進に寄与するキーワードとして、「ボーダレス・ワールド」を挙げた。VR(Virtual Reality:仮想現実)やAR(Augmented Reality:拡張現実)などのXR技術と、現実世界をデジタルデータで再現するデジタルツイン技術を組み合わせて、リアルな世界とデジタルな世界が融合したボーダレス・ワールドの実現を目指すという。

また、同社は両世界をシームレスにつなぐための高速なインテリジェントネットワークである、ヒューマンセントリックネットワークの構築にも前向きだ。

リアルとデジタルの融合と、これを支えるヒューマンセントリックネットワークによって、テクノロジーやサービス、業種ナレッジを統合したVertical(垂直統合型の) Serviceを提供していくとしている。

  • ボーダレス・ワールドに基づくサービス展開を見据える

    ボーダレス・ワールドに基づくサービス展開を見据える

富士通のローカル5G事業、現在地は?

森氏は人のエンパワーメントが最大限に発揮できるようになるための具体的な取り組みとして、同社のローカル5Gを活用した「未来の働き方」「尊厳ある生き方」「つながり合う体験」の3テーマの例を紹介した。

同社は未来の働き方の実現に向けて、特に工場や鉄道、建設業などの現場に焦点を当てたサービスに取り組んでいる。デジタル技術によって労働力不足を解消し、自動化や省人化に資するための事例だ。映像に基づくミリ単位の高精度位置測位技術は、パートナー企業らとの共創の場である「FUJITSU コラボレーションラボ」(神奈川県 川崎市)で体験可能。

  • 高精度位置測位技術の例

    高精度位置測位技術の例

同社は尊厳ある生き方を実現するために、疾患や障害を抱える人々の支援にも挑戦している。関西学院大学と共同で院内学級の児童・生徒向けに遠隔授業を実施したほか、指導者不足に対応するために福岡県ではパラスポーツのリモートコーチングを実施したとのことだ。

  • 尊厳ある生き方の実現に向けた挑戦

    尊厳ある生き方の実現に向けた挑戦

つながりあう体験の提供に向けては、ミクシィと共同で競輪場の音響や映像の刷新に挑戦した。富士通の5G技術と、ミクシィが強みとするコミュニケーションを掛け合わせた先進的な事例だ。また、KDDIとはメタバースの実現に向けた取り組みを開始している。現実世界で店舗に入店した人をメタバース空間上に再現し、遠隔地からリモートで入店した人と同じ空間でコミュニケーションを取りながら買い物体験ができる仕組みだ。

  • メタバースを活用した新しい購買体験

    メタバースを活用した新しい購買体験

富士通は今後について、あらゆる現場に対してデジタル技術を活用した未来の働き方を導入していく方針としている。また、FUJITSU コラボレーションラボを軸に、ビジョンを共有するユーザー企業およびパートナー企業との協業も積極的に進める。

将来的には取り組みの成果をグローバル規模で展開し、誰も取り残さないサステナブルな社会を目指すとのことだ。