グリーは8月4日、2022年6月期(2021年7月1日~2022年6月30日)の通期決算を発表した。なお、同日には決算説明会が電話会議にて開かれた。

連結業績は前年度比で増収増益となり、売上高は749億円(前年度比18.5%増)、営業利益は115億円(同5.9%増)だった。経常利益は為替差益を計上して141億円(同30億円増)で、当期純利益は投資有価証券売却益の反動減などが影響し101億円(同34億減)となった。

  • グリーの2022年6月期決算概要

    グリーの2022年6月期決算概要

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ゲームの新規タイトルがヒット、メタバースの海外展開進む

好調な業績をけん引したのは、「ゲーム」「メタバース」「広告・メディア」から成るインターネット・エンタメ事業だ。

「ヘブンバーンズレッド」「転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚」という新規タイトルがヒットしたほか、自社IPタイトルの「アナザーエデン」が好調を維持し、収益を押し上げた。また、新規タイトルのグローバルリリースなどゲームの海外展開も拡充したことで海外におけるコイン消費が伸びた。

スマートフォン向けメタバース空間「REALITY」を展開するメタバース事業では、積極的な投資を実施し、グローバル展開や機能強化を行ってユーザー獲得を進めた。現在、同サービスの海外ユーザー比率は8割で、12言語に対応、63の国・地域に展開している。

広告・メディア事業では、実店舗向けマーケティングSaaS「aumoマイビジネス」の導入店舗数が3万件を突破した。

投資・インキュベーション事業は安定的な利益貢献を続ける。2022年6月期を通じて28件のVC(ベンチャーキャピタル)ファンド、34件のスタートアップ企業へ総額156億円の投資を実行し、現在は評価換算額は314億円に成長。同期では営業利益18億円となった。

  • 2022年6月期の事業サマリー

    2022年6月期の事業サマリー

新規タイトルヒットの反動減で2023年は減益の見通し

次年度の2023年6月期(2022年7月1日~2023年6月30日)について、同社は新規タイトルヒットの反動減による減益の見通しを示した。事業方針としては引き続き、インターネット・エンタメ事業の柱であるゲーム事業、メタバース事業、広告・メディア事業を継続強化するという。

  • 2023年6月期の事業方針

    2023年6月期の事業方針

なお、同期よりゲーム事業は「ゲーム・アニメ事業」、広告・メディア事業は「コマース・DX事業」に改称となる。

ゲーム・アニメ事業では、IPの創出・育成力強化やグローバル運営体制の強化で主力タイトルの収益力を向上させる方針だ。中期的には、2022年6月期のヒット実績で積み上げたノウハウをベースにして、2024年6月期以降のリリースでヒットを再現するねらいだ。

メタバース事業では、グローバルで数億人規模のユーザー獲得を目指し、REALITYのコア機能となる「ライブ配信」「コミュニケーション」「アバター」「ゲーム」「ワールド」の強化を進める。

コマース・DX事業において、同社は広告・マーケティングを中心に企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するDX事業への参入を2022年6月に発表した。

DX事業では基本的に、同社グループの広告・マーケティングのケイパビリティを統合して外部企業に提供していく方針だ。

  • コマース・DX事業の事業方針

    コマース・DX事業の事業方針

DX事業ではツール・システムを活用した事業成長、収益創出まで伴走

これまでも同社では、Glossom、グリーライフスタイル、3ミニッツ、ExPlayという4つの子会社が、ソーシャルマーケティングやデータマーケティング、カスタマーエクスペリエンスや広告などの支援事業を個社ごとに展開してきた。

マーケティング領域のDXソリューションやサービスは、すでに他社からも提供されているが、あらためてグリーとして統合的なサービスとして提供する理由とは?

DX事業の責任者であるグリー 執行役員の足立和久氏は、「競合他社のマーケティング支援はマーケティングオートメーションのツールやデータ活用のためのクラウドシステムなど、成果物の納品がゴールになっていることが多い。子会社が企業を支援する中で、ツールなどを活用して事業を成長させる、あるいは収益を生むところまで支援されていない企業を目の当たりにしてきたことから、インターネットマーケティングを生業にする企業として、当社でも支援できることがあると考えた」と明かした。

同社では、マーケティングのデジタル化とその先のDXにあたって、企業が目標とするKPIの達成に伴走支援し、事業成長につながるところまで企業を支援するそうだ。

将来的には、同社の投資・インキュベーション事業と連携して、DXの支援先企業の他社連携や投資関連のサポートなども行っていくことを検討しているという。