メタバースにまつわる最新の取り組みを紹介する「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」が7月27日と28日にグランドハイアット東京(東京都 港区)にて開催中だ。今年が初めての開催となる同エキスポでは、メタバースに関連するプロダクトやサービスを展示するほか、有識者を招いたカンファレンス、パネルディスカッションなどが企画されている。
サービスの展示を行うのは、コインチェック、凸版印刷、大日本印刷、パーソルマーケティング、ソフトバンク、NTTdocomo、サイバーエージェントなど。なお、同エキスポで展示しているサービスの一部は、2022年10月18日から4日間開催予定の「CEATEC 2022」の会場で一般公開されるとのことだ。
エキスポの開幕に際して、Metaの日本法人であるFacebook Japanの代表取締役を務める味澤将宏氏がオープニングセッションに登壇し挨拶を述べた。
味澤氏は冒頭に「今回のイベントの趣旨は『共創』だ。インターネットがそうであるように、メタバースもどこか1社だけで作るものではない。この会場には日本のメタバースをけん引する企業や開発者、クリエイター、関係省庁の方々が集まっているので、みんなでメタバースを作るための場にしたい」と強く語っていた。
オープニングセッションには、米MetaのCTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)であるAndrew 'Boz' Bosworth氏がビデオメッセージを送った。
同氏は「日本という国はテクノロジーで未来を形作り、具現化してきた。私が幼少期に初めてゲームボーイで遊んだ時も、お小遣いを貯めて日本でしか手に入れることのできなかったMDプレイヤーを買った時も、モバイルインターネットの時代でもそうだった。VR(Virtual Reality:仮想現実)が急伸したここ数年も同様である」とコメントした。
その後に、「MetaのQuest2が世界的なヒットとなった時も、日本の開発者やデジタルクリエイターの方々が世界に先駆けてその可能性を広げてくれた。日本ではエンターテインメント領域以外でもメタバースが広く活用されていることに私たちもインスピレーションを受けている。常にテクノロジーで未来を切り開いてきた日本は、私たちが次世代のインターネットだと考えているメタバースのアーリーアダプターだ。日本の企業や開発者、研究者、クリエイターの方々こそが次世代のテクノロジーを作るにあたって重要な役割を果たすだろう」と続けた。
また、デジタル大臣を務める牧島かれん氏もオープニングセッションにビデオメッセージを送った。
同氏は「私もメタバース上で演説や会議に参加したことがあり、卓球などのスポーツやジムも体験した。メタバースは、趣味やコンテンツ取引、仕事など、人と人が交流するあらゆる機会を創出する場でもあり、我が国の強みである豊富なデジタルコンテンツの価値を最大化できる場にもなると期待している」と述べていた。
さらに「場所や行動の制限が無くなることで、日本の優秀な人材が制約を受けることなく世界中の人と交流できるようになるはずなので、メタバースによってそのような人材が持っている力を遺憾なく発揮できるだろう」と期待を見せていた。
政府が6月に発表した骨太の方針の中で、メタバースを含むデジタルコンテンツは新たな付加価値を生み出す源泉であるとして、利用拡大を図ると示すなど、政府としてもメタバースの活用には注目しているようだ。
牧島氏はメッセージの中で、テクノロジーの進展の障壁となり得る制度や規制は今後大胆に見直していく必要があるとの見解を示した。デジタル庁はデジタル社会実現のための司令塔であるとして、関係省庁と緊密に連絡しながらメタバースやWeb3に関連する施策をデジタル庁が進めるとのことだ。
2人からのメッセージを受けてFacebook Japanの味澤氏が再度登壇し、「これからは官民が連携してメタバースを推進する必要がある」と述べた上で、メタバースの構築に向けたMetaの取り組みを発表した。同社はこれまで培ってきたハードウェア・ソフトウェアの研究実績に基づいて、メタバースの基幹となるツールやテクノロジーを提供していくとのことだ。
旧Facebook社はMetaへと社名を変更したが、企業ミッションは引き続き「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」で変更はないそうだ。メタバースは物理的な距離や属性を超えて人と人がつながるためのテクノロジーであるとしている。
味澤氏はメタバースの特徴として、「immersiveness(没入感)」「presence(その場にいるような感覚)」「interoperability(相互運用性)」の3点を挙げた。これまではアプリケーションごとに閉じられた世界の中で情報交換が行われていたインターネットだが、メタバースの実現によって、アプリケーション間、プラットフォーム間、あるいは仮想空間と現実空間の間でアセットを持ち運べるような世界が実現できる。
このような世界においては、ゲームやエンターテインメント、フィットネスなど、物理的には離れている場所にいても同じメタバース空間で同じ体験ができるようになる。メタバースの発展に伴って、今後は仕事や教育、コマースなども活発化すると同氏は見ている。ある調査によると、今後10年間でメタバースが生み出す経済効果はGDPの約2.8%(3兆ドル相当)にものぼるとの試算もあるようだ。
「メタバースによって新しい経済も生まれるだろう」(味澤氏)
味澤氏は責任あるメタバースを構築するための四原則を示した。「経済的機会」「プライバシー」「安全性と公正性」「公平性と包括性」だ。独占的ではなくオープンなデジタル経済圏を形成するほか、利用者のデータは透明性のある活用方法がなされるべきであるとしている。
同社は今後、メタバースの推進のためにVR技術に対してソフトウェアとハードウェアの両面から投資を継続する方針だ。次世代型のハイエンドモデルヘッドセットである「Project Cambria」、VRワークスペース「Horizon Workrooms」などを順次リリースする予定だという。そのほか、AR(Augmented Reality:拡張現実)やMR(Mixed Reality:複合現実)などにも注力する。
さらに、メタバースが今後ますます発展するためにはクリエイターが不可欠であるとして、クリエイターがメタバースのなかで収益を得ながらビジネスを構築できる基盤づくりを進めるとの方針も示した。