富山大学は8月2日、マウスを用いた実験から、睡眠中でも脳は活動を続けて(思考して)おり、異なる体験間の類似性を見出すことに加え、その神経細胞レベルの仕組みを明らかにしたことを発表した。
同成果は、富山大 学術研究部医学系 生化学講座のモハメド・アリ大学院生、同・井ノ口馨教授らの研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。
「アイドリング脳」、要は潜在意識下の脳の働きが重要な情報処理を行っているらしいことは、古くから示唆されてきた。そして、近年の神経科学的なアプローチにより、睡眠中の脳活動が記憶の定着に重要であることも明らかにされている。
ところが、より高次の脳機能、たとえば創造性や課題解決などに対しても、睡眠中の脳活動が重要な働きをしているのかどうかは不明であり、もしそうだとしたら、睡眠中のどのような神経活動によって、そうした高次の情報処理が行われているのかという点も、未解決となっている。
そこで研究チームは今回、マウスを用いて部屋の形状のわずかな類似性を見出す行動課題を開発し、実験を行うことにしたという。
具体的には、4グループに分けられたマウスが、イベント1(E1)として、それぞれ4つの異なる形状(三角形、六角形、八角形、円形)の部屋を体験し、各部屋の形状を記憶。その翌日、四角形の部屋に入れられ電気ショックを与えられ(イベント2:E2)、四角形の部屋とショックの間の関係を学習する文脈恐怖条件付けを経験させられた。
さらにその翌日、マウスが再びE1と同じ部屋に戻されたところ、四角形の部屋との形状の類似度合いに応じて、異なるすくみ反応が示されたという(テスト1)。わずかながらも類似度がある三角形や六角形の部屋では、高いすくみ反応が示された。それに対し、類似度がほとんどない八角形や円形の部屋ではすくみ反応を示さなかったとする。
四角形の部屋でのすくみ反応は全グループが同程度であり(テスト2)、四角形の部屋に対する恐怖記憶の度合いは、全グループで同じ高いレベルに保たれていた。この結果は、部屋の形状の類似度に応じて恐怖記憶がE1の部屋の記憶に関連づけられること、すなわちマウスが部屋の形状のわずかな類似度を認識できることが示されているとする。