北海道大学(北大)とSCREENホールディングスは7月29日、半導体洗浄時のナノ構造物の倒壊挙動を明らかにしたことを発表した。

同成果は、北大 低温科学研究所の木村勇気准教授、SCREENホールディングスの佐々木悠太氏らの共同研究チームによるもの。詳細は、ナノマテリアルに関する分野全般を扱う学術誌「ACS Applied Nano Materials」に掲載された。

近年、半導体のプロセスの微細化の速度は鈍化しているが、その理由の1つにウェハの洗浄工程において、洗浄液の表面張力によって半導体のナノ構造物が倒壊してしまう現象がある。

これまでは洗浄を行った後、洗浄液を低表面張力液体の「2-プロパノール」(IPA)に置換してから乾燥を行うことで、ナノ構造物の倒壊を防いでいたが、7nmプロセスや5nmプロセスといった超微細プロセスでは、IPAでも倒壊を防ぐことが難しくなってきているという。

しかも、その肝心のナノ構造物の倒壊挙動が直接観察された例は少なく、その動的挙動は不明な点が多いという。今後のさらなるプロセスの微細化では、ナノ構造物がより倒壊しやすくなることが考えらえるが、そうした超微細プロセスで適応可能な乾燥方法を開発するために、ナノ構造物の倒壊挙動を評価する手法を確立する必要があったという。

そこで研究チームは今回、ナノ構造物が液体の蒸発時に倒壊する様子を、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察する手法を開発することにしたという。TEMで観察するためには、試料を高真空環境である試料室に入れる必要がある。液体を観察する場合は電子ビームを透過しやすい特殊な薄膜で構成された溶液セルの中に液体を封入し、試料室の高真空環境と液体を薄膜で隔てた状態で観察する。

今回の研究では、乾燥過程で壊れるほど繊細な半導体基板表面に形成したナノ構造物(シリコンナノピラー)を集積イオンビーム装置で切り出し、IPAとともに溶液セル内に封入した上で、液体中のナノ構造物の観察を行うことで、ナノピラーが倒壊する挙動を観察することに成功したとする。