まず、Mg2+イオンを含む塩である「Mg(TFSI)2(TFSI-=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)」を、配位高分子のナノ細孔内に導入した化合物「MIL-101⊃{Mg(TFSI)2}x」が合成された。xはMg2+イオンの導入量であり、分析の結果、最大でx=1.6の量を細孔内に包接できることが明らかにされた。

またイオン伝導度の評価が、最大量のMg2+イオンを含むx=1.6の試料MIL-101⊃{Mg(TFSI)2}1.6を用いて実施。多孔性である配位高分子は、外部の蒸気などをゲスト分子として吸着することにより、物性が変化することが知られていたことから、測定試料の外部の雰囲気を完全に制御した状態で交流インピーダンス測定が行われ、各種ゲスト分子の蒸気存在下において評価が行われた。

その結果、合成した試料は室温(25℃)・アセトニトリル蒸気下で1.9×10-3S cm-1のイオン伝導度を示すことが判明。これは、これまでに報告されているMg2+イオンを含有するすべての結晶性固体の中でも、高いイオン伝導度だという。

  • イオン伝導度

    (左)配位高分子のナノ細孔内に導入されたマグネシウムイオンはゲスト分子の蒸気存在下で効率的に伝播し、高いイオン伝導性を示す。(右)イオン伝導度はゲスト分子の種類に依存し、最適なゲスト分子の存在下では室温で1.9×10-3S cm-1の実用的な伝導度を示したという (出所:理科大Webサイト)

さらに、細孔内に導入されたMg2+イオンは、塩として対イオンとともに導入されているため、イオン伝導性がMg2+イオンに由来しているかを確認する必要があることから、イオン伝導度に占めるMg2+イオン伝導度の割合であるMg2+イオンの輸率が測定されたところ、Mg2+イオンの輸率は0.41と決定された。これは、今回合成した試料において、イオン伝導度の約半分がMg2+イオンの伝播に由来していることを示しており、実用的なMg2+イオン伝導性を示すことが確かめられたとする。

加えて、どのような機構で試料が高Mg2+イオン伝導性を発現するのかを解明することを目的に、イオン伝導度の圧力依存性やゲスト分子の吸着特性の評価、赤外分光測定が行われたところ、高Mg2+イオン伝導性発現の要因として、アセトニトリル蒸気下では、ゲスト分子としてアセトニトリル分子が配位高分子の細孔内に吸着。そして、これらがMg2+イオンに配位することで、移動度の高い配位性のイオンキャリアを生じることが判明したという。

なお、研究チームでは、今回の研究により、固体中の構造やイオン周りの環境をうまく設計すれば、二価の陽イオンであっても固体の高イオン伝導体を作れることが明らかにされたとしており、将来的に、二価以上のイオンを用いた全固体電池用電解質としての応用などを通じて、社会に貢献できることが期待されるとしている。