神戸大学は7月26日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴って生じた副腎皮質ホルモンの分泌障害が約15ヶ月にわたり持続した後に回復した例について、その経過に関する報告を行い、「新型コロナの後遺症」として見逃されている軽症の副腎皮質ホルモン分泌障害がある可能性があることを発表した。
同成果は、神戸大大学院 医学研究科 糖尿病・内分泌内科学部門の小川渉教授、同・山本雅昭助教、兵庫県立 加古川医療センター 糖尿病・内分泌内科の飯田啓二部長らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本内分泌学会が刊行する機関欧文学術誌「Endocrine Journal」に掲載された。
新型コロナの症状としては、肺炎を中心とした呼吸器系のものが注目されるが、呼吸器以外にも血管や心臓、胃腸や肝臓、神経、筋肉や骨など、さまざまな臓器に関連する症状を伴うことが報告されている。また、下垂体、甲状腺、膵臓、副腎、精巣といった内分泌臓器の障害に伴う、ホルモン分泌の低下も報告されている。
そして、新型コロナのパンデミックが長期化している現在、回復後に、呼吸器症状のみならず倦怠感や微熱、身体の痛みなど、さまざまな症状が長期にわたって持続する後遺症が大きな問題となっている。しかし、それらの原因は十分に明らかになっておらず、またどれくらいの期間続くものなのかも良く分かっていない。
そうした中、ある新型コロナ患者を対象に、副腎皮質ホルモンの低下という後遺症の1年半にわたる追跡が行われたという。対象となった患者は、感染判明後に入院、一時は人工呼吸器をつけるほどの症状となったが、無事に回復。しかし、呼吸器を外して10日ほどたった時点で、突然血圧の低下が確認されたという。検査の結果、副腎皮質ホルモンの分泌が強く障害されていることが判明。副腎皮質ホルモンを投与することで、血圧低下が改善されたとする。