香港大学と石川県立大学は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した子供は成人と比較して、感染時に重症化が示唆されている同ウイルスに特徴的なアクセサリータンパク質「ORF3d」および「ORF8」に対する抗体を多く産生することが確認されたことを発表した。
同成果は、石川県立大 生物資源工学研究所の森正之准教授、香港大学医学部 パスツール研究所の研究者らによる国際共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、基礎疾患や肥満の罹患者が重篤化しやすいとされている一方、子供は成人と比較して重症化しにくいことも報告されている。
SARS-CoV-2が持つアクセサリータンパク質のORF3dおよびORF8は、近縁ウイルスが有していない、特徴的なタンパク質であり、これまでの解析によれば、ORF3dは感染細胞において、免疫系などで働くサイトカインの一種であるインターフェロンの働きを抑制すること、一方のORF8は免疫機能に重要な役割を持つ「MHCクラスI」の働きを抑え、細胞障害性T細胞免疫の機能を抑制することが報告されている。また、ORF8遺伝子領域が欠失したウイルス株は、重症化しにくいことが報告されている。
そこで研究チームは今回、SARS-CoV-2に感染した子供と成人におけるアクセサリータンパク質に対する免疫反応を詳細に比較することにしたという。
その結果、子供では、成人と比較してORF3dおよびORF8に対し、多くの抗体を生産する強い免疫反応を示すことが認められたという。その結果、子供において重症化が起こりにくくなると考えられたとする。
なお研究チームでは、今回の成果を踏まえ、今後、香港大学が特許を持つ、ORF3dおよびORF8を標的にした診断法のさらなる展開や治療薬の開発が期待されるとしている。