実際に実験装置を用いてCO2の還元反応を実施した結果、プラズマを作用させながら触媒反応を進行させることで、CO2の一酸化炭素(CO)転換効率が向上することが実証されたとする。また、条件を変えて検討が進められたところ、プラズマを作用させた場合の反応効率は、熱のみの場合よりも最大で約3倍向上することが確認されたともする。

さらに、分光分析ならびに理論計算の結果をもとに、今回の反応系におけるCO2還元プロセスについての考察が行われたところ、Pd2Ga/SiO2合金触媒を用いると、CO2と吸着水素が直接反応するEley-Rideal(E-R型)反応で、中間生成物である単座フォルメート(m-HCOO)が生成され、逐次的にCOまで変化する反応経路が有力であることが示されたという。

プラズマはCO2を振動励起してm-HCOOの生成を加速するだけでなく、H2も活性化してm-HCOOの分解を促進していることが示唆されたとする。加えて、プラズマは熱源ではなく活性種供給源であること、また触媒劣化の原因になるような構造変化も生じていないという、工業上きわめて重要な知見も得られたという。

  • DFT理論計算結果に基づく、プラズマ触媒反応機構

    DFT理論計算結果に基づく、プラズマ触媒反応機構(Pd2Ga(020)) (出所:東工大プレスリリースPDF)

研究チームでは、今回の一連の成果をCO2/アンモニア(CH4)改質(CO2+CH4=2CO+2H2)およびCO2メタネーション反応(CO2+4H2=CH4+2H2O)に応用したところ、大幅な反応促進効果が確認されたとする。メタネーション反応はプラズマによって常温駆動が可能で、熱反応では活性が低い触媒でも(CH4収率14%:触媒温度250℃)、CH4収率64%(触媒温度250℃)から100%(触媒温度300℃)が達成されたという。

なお、プラズマによって化学プロセスの熱エネルギー依存性を軽減すれば、熱化学反応では対応できない負荷応答性の向上や、プロセス間の温度ミスマッチに起因した種々の損失を解消し、変動性再生可能エネルギーの化学プロセスへの大量導入を実現できるという。そのため今後は、パラジウムなどの貴金属を使わない高活性触媒を開拓し、触媒設計指針を確立することを目指すと研究チームでは展望を語っており、スケールアップに対応したプラズマ触媒反応の実装研究により、CO2再資源化・有効利用を基盤としたカーボンニュートラル社会の早期実現に貢献するとしている。