そして、同模型において重力相互作用が量子力学に従うなら、レゲット・ガーグ不等式の破れが現れることが発見された。これによって、重力の実在性の破れという、量子力学的性質が確かめられる可能性が明らかとされることとなった。重力相互作用によって現れるレゲット・ガーグ不等式の破れは、重力が非実在性を示す証拠になり得ることを意味しているという。また、実験的な実証の可能性についての検討も行われ、振動子を強いスクイーズド状態として用意できれば、破れのシグナルが大きくなることも示されたという。

今回の研究と深い関係のある研究として、量子もつれに着目した重力の量子性の検証の重要性が指摘されているともしている。量子もつれは、量子力学固有の性質であり、非局所的な量子相互作用によってのみ生まれることが知られている。そのため、もし重力相互作用によって量子もつれが生まれるならば、重力が非局所的な性質を持つ量子相互作用であることが示唆されることになるという。今回の振動子と重ね合わせ状態の粒子からなるハイブリッド量子系でも、重力による量子もつれが生じており、重力による量子もつれとレゲット・ガーグ不等式の破れとの関係を明確にすることも今後の課題と研究チームでは説明している。

  • 振動子と重ね合わせ状態の粒子からなるハイブリッド量子系

    (左)振動子と重ね合わせ状態の粒子からなるハイブリッド量子系。(右)懸架型光学機械振動子の模型図。細線により吊るされた鏡振動子が、光共振器の一端となって光共振器内のレーザー光と相互作用する。レーザー光の読み出しとフィードバックにより、鏡振動子を量子制御する (出所:九大プレスリリースPDF)

また、今回の成果を実験で確かめるためには、巨視的振動子の量子状態を実現する必要があり、巨視的振動子の量子状態は、光共振器の一端を鏡振動とする光学機械振動子の量子制御によって実現ができると期待されているという。

なお、今後、このような巨視的量子系の実現に向けて、実験分野と連携した研究も必要であり、巨視的振動子の量子制御や物質の重ね合わせ状態の生成といった量子技術が、基礎物理学の難問である量子重力の解明に重要な役割を果たすことが期待されると研究チームではしている。