titlre=月への到着は約4か月後、今夏には巨大ロケットと有人宇宙船の試験飛行も
月到着は約4か月後
CAPSTONEの打ち上げには、商業調達により米国のロケット企業「ロケット・ラボ」の「エレクトロン」ロケットが選ばれた。CAPSTONEも超小型ならエレクトロンも超小型であり、超小型ロケットで超小型探査機を月へ送り込むことができるかどうかも実証テーマのひとつとなっている。
エレクトロンは本来、超小型衛星を地球周回軌道へ送り込むためのロケットであることから、月への飛行のために、「ルナー・フォトン(Lunar Photon)」と名付けられた新型の上段ロケットが開発された。これまでもフォトンという上段が衛星の精密な軌道投入などに使われていたが、それを月への飛行用に改造。CAPSTONEを打ち上げるとともに、ルナー・フォトン自身も月探査機として月をフライバイし、写真の撮影などを行う予定となっている。
CAPSTONEを搭載したエレクトロンは、日本時間6月28日18時55分52秒、ニュージーランドのマヒア半島にある同社の発射場から離昇した。ロケットは順調に飛行し、地球低軌道に乗った。
その後、ルナー・フォトンは6日間かけて、6回に分けてエンジンを噴射し、地球低軌道から離脱。そしてCAPSTONEを分離した。
その直後の7月5日には、CAPSTONEとの通信ができなくなるというトラブルが発生したが、翌6日には通信が再確立され、その後は順調に航行を続けている。
CAPSTONEは現在、「弾道的月遷移(BLT:Ballistic Lunar Transfer)トラジェクトリー」という特殊な弾道トラジェクトリーに乗っている。通常、月探査機の打ち上げにおいては、ホーマン遷移軌道という最短3日で月へ到達できる軌道に乗せることが多い。一方、BLTトラジェクトリーでは4か月もかかるが、月へ到達するのに必要な燃料を劇的に節約することができる。この飛行経路を使った月への飛行もまた、重要な技術実証のひとつである。
CAPSTONEは今後、自身のスラスターと太陽の重力を利用し、月の軌道をはるかに超えて、地球から約150万km(地球と月の距離の3倍以上)も離れたところまで到達。その後、月周辺へと引き戻され、そして11月13日に月に追いつくように接近し、目標のNRHOに入る予定となっている。
今後のアルテミス計画
一方、現在地球では、アルテミス計画で宇宙飛行士を打ち上げる巨大ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」と、有人宇宙船「オライオン(Orion)」の無人での試験飛行ミッションであるアルテミスIの準備が進んでいる。
すでに6月下旬には打ち上げのリハーサルが行われ、24日に完了。現在はフロリダ州のNASAケネディ宇宙センターのロケット組立棟で、打ち上げに向けた最後の準備が進んでいる。
予定では8月下旬にも打ち上げられる予定で、オライオンはまだ月からはるか遠くにいるCAPSTONEを尻目に月の周回軌道に入り、約3週間ほど滞在したのち地球へ帰還することになっている。
アルテミスIが無事成功すれば、2024年以降にはアルテミスIIを実施。オライオンに実際に宇宙飛行士が乗り、SLSで月へ向かって飛行し、そして月の裏側を回って地球へ帰還する。
また、同じ2024年には、ゲートウェイの最初のモジュールの打ち上げも計画されており、CAPSTONEが実証するNRHOに投入する。また、ゲートウェイから月の南極へ降り立つための月着陸船の打ち上げも行われる。
そして2025年以降、アルテミスIIIミッションで、4人の宇宙飛行士が乗ったオライオンがSLSで打ち上げられ、ゲートウェイを経由し、有人月探査が行われることになる。
英単語のCapstoneは、もともとピラミッドの頂上部に置かれる四角錐型の石という意味で、転じて物事の総仕上げという意味もある。まさに、ゲートウェイ建設、そしてアポロ計画以来となる有人月着陸に向けた準備の総仕上げとなるCAPSTONEミッション。人類の新たな大きな一歩のため、小さな探査機の冒険が始まった。
参考文献
・CAPSTONE Launches to Test New Orbit for NASA’s Artemis Moon Missions | NASA
・CAPSTONE | Advanced Space
・Follow CAPSTONE’s Four-Month Journey to the Moon in Real Time | NASA
・A unique halo orbit is the road less traveled around the Moon | NASA
・Rocket Lab Moon Mission for NASA a Success | Rocket Lab