愛媛大学は7月14日、日本のペットネコを対象に「有機ハロゲン化合物」曝露による健康影響に焦点を当てて調査を行ったところ、ネコ血清中の「ポリ塩化ビフェニル」および「ポリ臭素化ジフェニルエーテル」の濃度と、甲状腺ホルモン濃度との間に有意な負の相関が認められ、有機ハロゲン化合物の曝露がネコの血中甲状腺ホルモンレベルを低下させている可能性を示したことを発表した。
同成果は、愛媛大 先端研究・学術推進機構 沿岸環境科学研究センターの野見山桂准教授を中心とした、愛媛大大学院 農学研究科、北海道大学 獣医学研究院の研究者も参加した共同研究チームによるもの。詳細は、環境に関する全般を扱う学術誌「Science of The Total Environment」に掲載された。
ペット動物はヒトと生活圏を密接に共有することから、化学物質への恒常的曝露が懸念されている。そのような状況で、日本においてイエネコの飼育率は増加の一途を辿っており、2017年にはイヌの飼育率を超えたことが報告されている。
しかしイエネコは、グルクロン酸抱合を担うUDP-グルクロン酸転移酵素の一部欠損が知られており、化学物質に対する代謝・排泄能がほかの陸棲哺乳類に比べて低いとされており、有害化学物質曝露による健康に対する影響が懸念されてきた。
特に、有機ハロゲン化合物であるポリ塩化ビフェニルとポリ臭素化ジフェニルエーテルは、その環境残留性と生物蓄積性が高いため、コンパニオンアニマルへの影響が懸念されている。研究チームでもこれまでの研究から、日本のペットネコが海産物を主原料とするキャットフードの摂餌により、慢性的にポリ塩化ビフェニルに曝露されていること、毛づくろい(グルーミング)によりハウスダスト中に含まれるポリ臭素化ジフェニルエーテルに高曝露されていることを報告してきたという。ただし、これら汚染物質曝露によるネコの健康への影響については良く分かっていなかったという。