半導体・FPD基板搬送装置メーカーであるローツェは7月13日、2023年2月期第1四半期(3~5月)の決算業績を発表した。それによると、売上高は前年同期比50%増の216億円、純利益は同90%増の51億円と好調であったという。

具体的には、半導体製造装置の需要拡大により主力の半導体関連装置の売り上げが大幅に増加したほか、前期末の受注増加によりFPD関連装置の納入が進み、その売り上げが2.3倍に増加したとする。ただし、今期は大口受注がなく、将来の受注は不透明であるともしている。また、損益面では売り上げの増加に伴うベトナム工場の量産効果および為替の影響などもあり増益となったとしている。

地域・国別で売上高の割合を見ると、中国が33%でトップ、次いで米国24%、台湾16%、韓国10%、日本8%となっており、海外での売り上げが全体の92%を占め、特に中国市場での伸びが目立つという。

熊本、ベトナム、中国で工場拡張

同社では、TSMC(JASM)の熊本進出に備えて、建設中のその新工場近くにあるローツェ九州工場のクリーンルーム床面積を2倍に広げる工事を今秋行う計画だとしている。また、ベトナムで建設中の新工場A10は予定通り2022年8月末に竣工予定で秋からロードポート、ロボット、ウェハアライナなどの製造を開始させ、ベトナムでの生産能力を倍増させる予定。中国上海の子会社でのクリーンルーム設置工事は、都市封鎖のため中断されていたが、6月より再開しており、2022年秋にもベトナム工場で製造された中国市場向けシリコンウェハ搬送装置であるEquipment Front End Module(EFEM)の最終組み立てを始める計画だとしている。

  • ローツェのベトナムA10工場

    ほぼ完成したローツェのベトナムA10工場 (出所:ローツェ、2022年7月)

景気減速懸念も新規半導体需要の創出で業績は堅調に推移見通し

なお、同社は2023年2月期の今後の半導体景気の見通しについて、新型コロナの感染拡大防止を目的とした中国のロックダウンやロシア・ウクライナ情勢の影響などにより足元の事業環境に減速感が広がるとの見方を示している。

一方で、5G、IoT、データセンター、スマートフォンの高機能化、メタバースなどといった新たな半導体需要の創出とともに、カーボンニュートラルやSDGsの観点から、グリーン投資による半導体需要も生まれると見ており、自動車や家電製品など、一部の最終製品では半導体不足が継続すると見ている。

半導体関連装置事業に関しては、事業環境の変化による客先からの装置発注に対する影響はさほどなく、主力の搬送装置の受注・販売は堅調な推移を見込んでいる。しかし、半導体をはじめ各種部品の入手困難な状況、長納期部品の調達コストが増加する傾向が続く見込みであるともしており、ベトナムおよび中国での現地生産体制の強化を図ることで対応を進め、さらなる売り上げの向上を目指すとしている。