東京大学(東大)は7月12日、ペロブスカイト太陽電池とCIGS太陽電池を組み合わせたタンデム太陽電池としては世界最高クラスの変換効率となる26.2%を達成したことを発表した。

同成果は、東大大学院 工学系研究科 先端学際工学専攻の中村元志大学院生(研究当時)、東大大学院 総合文化研究科 広域科学専攻の多田圭志学術専門職員、東大 先端科学技術研究センター 附属産学連携新エネルギー研究施設の別所毅隆特任講師、東大大学院 総合文化研究科 広域科学専攻の瀬川浩司教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行するエネルギー変換と貯蔵に関する学際的な分野を扱う学術誌「ACS Applied Energy Materials」に掲載された。

ペロブスカイト太陽電池は、塗布(印刷)プロセスで製造可能な安価な太陽電池ながらも、単結晶シリコン太陽電池に匹敵する高い変換効率を示し、その変換効率は現在、最高で25%台にまで到達している。また、塗布プロセスを用いるとフィルム基板上にも形成できることから、次世代の高性能かつ軽量なフレキシブル太陽電池としての研究開発も進められている。

ただし、電動航空機、電気自動車、ドローンなどといった分野で利用するための変換効率としては30%台を実現する必要があるとされており、その実現に向け、CIGS太陽電池など、既存の軽量フレキシブル太陽電池と組み合わせたタンデム太陽電池とする方法が検討されている。

瀬川教授らの研究チームは、そうしたペロブスカイト太陽電池とCIGS太陽電池を組み合わせたメカニカルスタックタンデム太陽電池の研究を進めてきたが、ペロブスカイト太陽電池をタンデム太陽電池に用いるためには、従来の金属電極を、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電層に置き換える必要があるとされていたという。

そこで研究チームは今回、ペロブスカイト層にダメージを与えずに高性能なITOを積層する手法を開発。高い性能を維持した状態で半透明なペロブスカイト太陽電池を作成することに成功したことで、変換効率19.5%の半透明ペロブスカイト太陽電池を開発することに成功したとする。

この高効率な半透明ペロブスカイト太陽電池とCIGS太陽電池を組み合わせたところ、メカニカルスタックタンデム太陽電池として変換効率26.2%が実現されたという。

  • 今回開発されたペロブスカイト/CIGSタンデム型太陽電池

    今回開発されたペロブスカイト/CIGSタンデム型太陽電池 (出所:東大Webサイト)

なお、研究チームでは今後、今回の研究成果を発展させていくことで、変換効率30%を超す軽量フレキシブル太陽電池を実現できる可能性があり、ビル壁面や大面積屋根などの建物設置のほか、電動航空機、電気自動車、ドローンなど高効率化と軽量化が求められる分野での活用や、新しい用途への展開も期待されるとしている。