大日本印刷(DNP)は、第5世代移動通信システム(5G)の周波数帯であるミリ波帯(28GHz帯)やSub6帯(3.7GHz帯、4.5GHz帯)で、特定の周波数の電波のみを選択的に吸収し、漏洩や干渉を防止する薄型・軽量の電波吸収シートを開発したことを発表した。

今回開発されたシートは、6月29日~7月1日に東京ビッグサイトで開催の「第5回 5G通信技術展」のDNPブースで展示された。

5Gが普及する中、電波同士の干渉や通信エリアからの電波の漏洩を抑えるため、特定の周波数の電波のみを選択的に吸収したいというニーズが増大してきているという。現在、こうした電波の干渉や漏洩の防止に対しては、電波吸収シートが用いられているが、これまでのものは重量やサイズなどの制約により、設置箇所が限られてしまうという課題があったほか、周囲の景観に調和可能な意匠性に関するニーズも高まっているという。

そこでDNPはこれらの課題を解決するため、5G周波数帯であるミリ波帯とSub6帯で、特定の周波数の電波のみを選択的に吸収する電波吸収シートの開発に挑むことにしたという。

そして今回、ミリ波帯とSub6帯における特定の周波数の電波に対して、-15dB以下の吸収量を有する電波吸収シートの開発に成功。同シートは、ユーザーの要望や用途に応じて、吸収する電波の周波数帯を調整した製品を開発・提供することも可能としたとする。

また、従来品と比べて材料や設計の工夫により、ミリ波帯対応シートで厚さ0.3mm・重さ0.5kg/m2、Sub6帯対応シートで厚さ1.6mm・重さ3kg/m2を達成したとしており、薄型かつ軽量であるため、多様な場所に簡便に施工・設置することも可能だとしている。

さらに、DNP独自の「EBコーティング技術」を活用することで、屋外でも利用可能な耐候性や耐傷性を実現したとする。木目調をはじめ、さまざまな意匠が施されたDNP製建具用シートなどと併用することで、特に屋内で求められる高い環境調和性・空間デザインを損なうことなく設置できるとする。

  • 木目調の建具用シートを貼り合わせた電波吸収シート

    木目調の建具用シートを貼り合わせた電波吸収シート。ミリ波帯用 (出所:DNP Webサイト)

なお、今後は、これらの特徴を持つ電波吸収シートの実証実験を進め、2023年までに製品化を目指すとしているほか、「フィルム型アンテナ」や「リフレクトアレイ」などの5G向け電波制御部材、DNPが保有する建装材との組み合せにより、景観を損なわず最適な5G通信用の電波環境を構築できるソリューションを提供していく計画だとしている。

  • Sub6帯用電波吸収シート

    Sub6帯用電波吸収シート。こちらも建具用シートを貼り合わせてある (出所:DNP Webサイト)