東芝デバイス&ストレージと東芝は6月15日、電力の制御などに用いられるパワー半導体において、ダブルゲート構造を採用した4500V耐圧の「逆導通型IEGT」(電子注入促進型絶縁ゲートトランジスタ)を開発し、従来のゲート制御を行わないシングルゲート構造と比較して電力のオン/オフが切り替わるスイッチング時の電力損失(スイッチング損失)を24%低減できることを確認したと発表した。

詳細は、5月22日から25日までカナダ・バンクーバー、およびオンラインで開催された半導体の国際学会「IEEE International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs (ISPSD) 2022」において発表された。

電力を供給、制御する役目を果たすパワー半導体は、電子/電気機器の省エネルギー化を進展させるのに不可欠なデバイスであり、そのうちの1つで、高耐圧や大電流動作を特徴とするIEGTは、大容量インバータ、高電圧直流送電(HVDC)システムなどで広く採用されており、大電流化・低損失化・高効率化・省電力化を追求する動きが加速している。IEGTにおける電力損失は、IEGTがオン状態の際の電力損失(導通損失)を低減させると、スイッチング損失が増えるというトレードオフの関係にあり、その改善が求められている。

そこで研究チームは、メインゲート(MG)とは別にホール制御型のコントロールゲート(CG)を設けることで、従来のシングルゲート構造と比較して導通損失を増加させずにスイッチング損失を低減する逆導通型IEGTを開発することにしたという。

基板の裏面から表面に電流を流すIEGTモードのときには、ターンオフ時にMGより先にCGをオフにすることで、基板中に蓄積されていたホールを減らし、ターンオフ損失を減少させる。また、基板の表面から裏面に電流を流すダイオードモードのときには、逆回復の直前にMGとCGを同時にオンにすることで、基板中に蓄積された電子を減らし、逆回復損失を減らす仕組みだという。

今回開発されたダブルゲート構造の逆導通型IEGTとゲート制御技術を組み合わせることで、従来のシングルゲート構造と比較して、IEGTモードの損失であるターンオフ損失を24%、ターンオン損失を18%低減できたとする。また、ダイオードモードの損失である逆回復損失を32%低減し、導通損失を増加させずにスイッチング損失を24%低減することを、試作デバイスの実測で確認したという。

(a)従来のシングルゲートの構造図。(b)ホール制御型ダブルゲート。(c)今回試作されたダブルゲート構造IEGT (出所:東芝Webサイト),A@今回試作されたダブルゲート構造IEGT|

なお、東芝デバイス&ストレージと東芝は、今回開発されたダブルゲート構造の逆導通型IEGTおよびゲート制御技術の開発を進め、2025年以降の実用化を目指すとしている。

  • スイッチング損失の低減効果

    スイッチング損失の低減効果 (出所:東芝Webサイト)