スリーエム ジャパンは6月14日、3Mがグローバルで実施している科学に対する意識調査「State of Science Index(ステート・オブ・サイエンス・インデックス:SOSI)」の2022年版の調査結果を発表した。

それに併せて、同志社大学 ハリス理化学研究所 専任研究所員 助教授の桝太一氏とsteAmの代表取締役および東京理科大学 数学体験館 副館長の中島さち子氏らによる調査結果の考察を含めたパネルディスカッションが開催された。

同調査は、3Mが2018年から実施している科学に対する意識調査。SOSI 2022年版では日本を含む17か国から各国約1000人、計1万7198人の成人男女を対象に調査を実施。調査では、「科学に対するイメージ」、「STEM分野における公平性」、「サステナビリティ」、「技能職・アップスキリング」、「ヘルスケア」、「次世代技術」の6つのテーマで計52問について回答を取得した。

スリーエム ジャパンのコーポレートR&Dオペレーション統括技術部長の宇田川敦志氏は同調査を実施している理由を「人々の科学に対する意識は未来に影響を及ぼす。人々が科学に価値を見出さなければ、科学への投資が減少し、イノベーションの機会が奪われることとなる。また将来のパンデミックや気候変動に対応するためには、科学者が必要だが、科学へのイメージが悪ければ、若者が科学の道に進まなくなる。そういった意味でもこの調査は3Mにとって重要だと考えている」とした。

調査結果のうち「科学に対するイメージ」と「STEM分野における公平性」の結果について、桝氏、中島氏、スリーエム ジャパンの宇田川氏によるパネルディスカッションが行われた。

  • スリーエム ジャパンのコーポレートR&Dオペレーション統括技術部長の宇田川敦志氏(左)、steAmの代表取締役および東京理科大学 数学体験館 副館長の中島さち子氏(中央)、同志社大学 ハリス理化学研究所 専任研究所員 助教授の桝太一氏(右)

    スリーエム ジャパンのコーポレートR&Dオペレーション統括技術部長の宇田川敦志氏(左)、steAmの代表取締役および東京理科大学 数学体験館 副館長の中島さち子氏(中央)、同志社大学 ハリス理化学研究所 専任研究所員 助教授の桝太一氏(右)

中島氏は高校2年生のときに国際数学オリンピック インド大会で日本人女性で初めて金メダルを獲得。その後東京大学理学部数学科を卒業し、2017年にSTEAM教育(STEM教育にArt:芸術の要素が加えられたもの)の普及を目指す「steAm」を設立し、代表取締役を務めている。

桝氏は、東京大学大学院農学生命科学研究科を修了後、日本テレビに入社、アナウンサーとして活躍した後に日本テレビを退社し、現在は同志社大学でサイエンスコミュニケーションについて研究を行っている。

桝氏が生物学、中島氏が数学、宇田川氏が化学をそれぞれ学生時代に専攻しており、そういった自身の経験も踏まえながら、今回の調査について考察を行った。

科学への信頼が高まっている世の中での課題とは

SOSI 2022年版の科学に対するイメージ調査では、「科学を信頼している」と回答した人が日本で88%、「科学者を信頼している」と回答した人が日本で82%となり、両項目とも2018年からの調査以降、過去最高値となった。

  • 科学・科学者への信頼度の2018年調査からの変化。グローバル平均より低いものの、2022年には最高値に達した

    科学・科学者への信頼度の2018年調査からの変化。グローバル平均より低いものの、2022年には最高値に達した(提供:スリーエム ジャパン)

また、「科学が日々の生活に与える影響」という項目でも日本では75%がかなり大きいと回答し、グローバル平均を40%上回った。

これらの結果に対し、桝氏は「科学への信頼が上昇した背景には、コロナ渦があるのではないかと思う。科学者がさまざまに健闘した結果とポジティブに受け止めている」とし、中島氏は「パンデミックが起きた結果なのは間違いないと感じている。情報ソースが重要視された結果なのではないか」、宇田川氏は「科学者がコロナ渦でさまざまなコミュニケーションを頑張った結果と受け止めている」と3者ともに科学・科学者への信頼の向上はポジティブな結果だとした。

一方で、桝氏は「科学への信頼が上がっているという結果は嬉しいが、次の課題は、何が科学なのか、なにを信頼するのかになってくるのではないか」ともした。