インターネットイニシアティブ(IIJ)は6月15日、クラウドの利用状況に応じて接続帯域をコントロールできる「IIJプライベートバックボーンサービス/Smart HUB」の提供を開始することを発表した。

同サービスは、各種クラウドサービスとの接続帯域を、あらかじめプールされた契約帯域からユーザー側で自在に割り当てることが可能で、トラフィック量に応じた接続環境を最適なコストで確保できるのが特徴。Microsoft AzureやAWS、Microsoft365などをマルチクラウドとして活用している場合、利便性が向上する技術となっているという。

  • 「IIJプライベートバックボーンサービス/Smart HUB」サービスイメージ

    「IIJプライベートバックボーンサービス/Smart HUB」サービスイメージ

近年、DX推進や働き方改革、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を背景に、国内企業では自宅やサテライトオフィスなど、会社以外でも場所を問わずに仕事ができる業務環境の整備が進んでいる。こうした動きに伴い、多くの業務システムにおいて自社ネットワーク環境(オンプレミス)からクラウドサービスへ移行するケースが多くなった。

企業のクラウドサービスの利用が年々増加している一方で、増大するクラウド接続のトラフィック量への対処、通信の安定性の確保、また、クラウド利用量の変動や複数のクラウドサービスの使い分けに対応可能な柔軟なネットワーク環境が求められている。IIJが提供するクラウドサービスのネットワークトラフィックでは、年約200%成長しているという。

IIJ 執行役員 ネットワーク本部長の城之内肇氏は、「最近はトラフィックの増加は安定してきたが、事務系システムの利用が拡大傾向にある。安全性とセキュリティが求められるだけでなく、広帯域に対応しているか、忙しい時期などに対応できる柔軟性を持っているかが重要だ」と、同サービスの開発背景を語った。

  • IIJ 執行役員 ネットワーク本部長の城之内肇氏

    IIJ 執行役員 ネットワーク本部長の城之内肇氏

同サービスでは、クラウドごとの接続帯域ではなく、クラウド全体に必要な帯域を「帯域プール」(最大100Gbps)として契約する。ユーザーは帯域プールから必要な帯域を必要な時に各クラウドサービスへ10Mbps単位で割り当てることができる。各ポートに割り当てた帯域に応じて課金される仕組みだ。

ユーザーは専用のコントロールパネルから、帯域割当てやファイアウォール設定などの変更がオンデマンドに行える。小規模に導入した後、徐々に帯域を増やしたり、急遽必要・不要になったトラフィックにあわせて、自由に帯域を変動させるなど、柔軟なネットワークコントロールが実現される。

例えば、「通信が増えてきたクラウド宛ての通信を既存環境に手を加えず逃したい」といった場合には、既存のネットワークと同サービスを接続し、クラウド通信のみをブレイクアウトするといった使い方ができる。このとき、面倒なルーティング管理や大量のセッションのための設備増強は不要だ。

  • 想定ユースケース「通信が増えてきたクラウド宛ての通信を既存環境に手を加えず逃したい」

    想定ユースケース「通信が増えてきたクラウド宛ての通信を既存環境に手を加えず逃したい」

また、「必要な時だけクラウド宛ての帯域を柔軟にコントロールしたい」といった状況も想定されるだろう。必要な時に必要な帯域をすぐに調節できるので、突発的な大容量通信が発生するかもしれない業務に最適だろう。

  • 想定ユースケース「必要な時だけクラウド宛ての帯域を柔軟にコントロールしたい」

    想定ユースケース「必要な時だけクラウド宛ての帯域を柔軟にコントロールしたい」

また同サービスは、IIJのバックボーン上にユーザー専用のネットワークを構築する「IIJプライベートバックボーンサービス」と接続しており、セキュアなネットワークを介してIIJのさまざまなデジタルワークプレース関連サービスと連携することが可能だ。

  • 既存のIIJサービスと連携できる

    既存のIIJサービスと連携できる

さらに、同社は大阪に西日本リージョン、東京に東日本リージョンを設置しているため、同サービスは東西に冗長構成(DR構成)を構築している。リージョン間の通信費用は不要で、IIJプライベートバックボーンに通信を任せることで、安定した通信が実現されるという。

なお、ユーザー拠点のオンプレミス環境と接続する機能「オンプレミス接続ポート」、各種クラウドと接続する機能「クラウド接続ポート」は有料オプションとして提供される。今後も随時拡張機能を追加する予定としている。

  • オプション品目

    オプション品目

IIJ ネットワーク本部 ネットワークサービス2部長の小野原雄平氏は「同様のサービスは競合も提供している。当社が提供するサービスの強みは広帯域に対応していること。加えて、さまざまなIIJサービスと連携できシームレスなデジタルワークプレイスが実現できる」とコメントしていた。

  • IIJ ネットワーク本部 ネットワークサービス2部長の小野原雄平氏

    IIJ ネットワーク本部 ネットワークサービス2部長の小野原雄平氏