インテックがマルチワイヤレス実証環境を公開

TISインテックグループのインテックは6月13日、インテック万葉スクエア(富山県高岡市)にて記者会見を開催し、ローカル5G(第5世代移動通信システム)をはじめとするマルチワイヤレス通信を利用した実証環境を同日より公開すると発表した。

同社は2021年10月に、マルチワイヤレス技術を用いて空間や場所にとらわれることのない環境の創出を目指す「ワイヤレスDX」構想を発表している。ワイヤレスDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するためのソリューションを実証する場として、同施設の開設に至ったという。

  • インテック万葉スクエア1階

    インテック万葉スクエア1階

同社は実証実験の場として、万葉スクエア1階エントランスのショールームに加えて、同ビル内のプロジェクトルームや研究開発ルームも開放する。館内にはローカル5Gのほか、プライベートLTE(sXGP)、Wi-Fiなどの電波を整備し、ケーブルや端末に制約されない環境を目指したとのことだ。

  • エントランスに設置されたローカル5Gアンテナ

    エントランスに設置されたローカル5Gアンテナ

ショールームには「マスクイレイサー」と「マルチワイヤレス技術特徴比較」の2つのソリューションを常設する。マスクイレイサーは、ローカル5Gと画像エッジAI(Artificial Intelligence:人工知能)を組み合わせることで、マスクをしている人の顔に口元の映像を重ね合わせて映像を出力するソリューションだ。笑顔や怒った顔など目元から感情を推定して、それに合うような口元の映像を投影する。

ローカル5Gを介した伝送により、リアルタイムな伝送と処理を実現しているという。前もって顔を登録することなく、カメラの前に立つだけで即時にマスクを外したような映像が投影される。また、複数人での撮影にも対応するという。

  • マスクイレイサーによる映像のイメージ

    マスクイレイサーによる映像のイメージ

マルチワイヤレス技術特徴比較では、ローカル5G、プライベートLTE、Wi-Fi 6の3種のネットワークを介してドローンが撮影した映像を伝送する様子を再現している。ローカル5Gを介した映像は精細な4K映像として確認できる。

山間部での災害発生時に、離れた防災拠点から高精細な映像で被災状況を確認するなど、今後ますます利用の場が広がると思われるドローンによる映像伝送を支えるソリューションだ。また、離れた拠点間においてデータをセキュアにやり取りするような新しい生活を支えるシステムにも寄与すると期待される。

  • マルチワイヤレスにより伝送した映像の比較

    マルチワイヤレスにより伝送した映像の比較(上からローカル5G、プライベートLTE、Wi-Fi 6)

同社グループはデータセンターやネットワークなどのITプラットフォームを提供するブランド「EINS WAVE(アインスウェーブ)」を展開している。同施設もEINS WAVEに対応し、テクノウェイブ100(神奈川県横浜市)と統合型閉域ネットワークで接続されている。そのため、遠隔地からロボットを操作するような実証実験も可能だとしている。

  • ローカル5Gを活用したスマートフォンアプリケーションの実証も可能だ

    ローカル5Gを活用したスマートフォンアプリケーションの実証も可能だ

同社は今後、カワダロボティクスとの共同実証として、横浜を操作者、万葉スクエアを工場または作業場と見立てて人型ロボットを操作する実証を予定している。また、ブルーイノベーションとの共同実証として、ドローンやAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)をマルチワイヤレス環境下で複数連動して倉庫内の作業効率化を目指す実証にも取り組む予定だ。

北陸発の共創イノベーションを目指して

インテック万葉スクエアは同社の開発事業の拠点でもあり、データセンターやネットワーク事業などの中心的存在を担う。同施設は2022年2月に、総務省北陸総合通信局よりSub-6(4.7ギガヘルツ)、スタンドアロンでのローカル5G無線局免許状の交付を受けている。これを契機としてローカル5Gの実証環境構築を進めたとのことだ。

同社のオープンイノベーションセンター所長を務める安吉貴幸氏によると、富山県を出自とする同社にとって地元でのローカル5Gの共創拠点開設は意義のあることなのだという。「富山県は北陸地方の中でも製造業が盛んな地域なので、マルチワイヤレス技術を活用したソリューションの活用シーンを実際に見ていただける場になれば」と同氏は述べていた。

  • インテック テクノロジー&マーケティング本部 新事業開発部長 兼 オープンイノベーションセンター所長 安吉貴幸氏

    インテック テクノロジー&マーケティング本部 新事業開発部長 兼 オープンイノベーションセンター所長 安吉貴幸氏

同社によると、北陸地方の中でもローカル5Gの実証環境を構築しているのは富山県だけだという。県内の製造業に限らず銀行やサービス業、自治体など地域や業種を問わずにさまざまな企業との共創を目指すようだ。

「以前から、当社のネットワーク事業を使って何か共創できないかと地元の製造業者から相談をいただいていた。各社が独自に5Gを用いたソリューションを急に事業化するのは難しいと思うので、当社のワイヤレス環境でアイデアを迅速にテストすることでイノベーションにつなげてもらえたら嬉しい」(安吉氏)

また、同社の常務執行役員でテクノロジー&マーケティング本部長を務める黛(まゆずみ)文彦氏は「当社は主軸の事業であるSIerのほかに研究開発も手掛けている。富山県にある拠点から新しいイノベーションを生み出すことで、当社の研究開発部門のネットワーク技術や最新のAIなどを体験してもらえればと思う。万葉スクエアでは開発から運用、データセンター、ネットワークサービスまでワンストップで提供できるので、業種を問わずに共創の場として利用してほしい」とコメントしていた。

  • インテック 常務執行役員 テクノロジー&マーケティング本部長 黛文彦氏

    インテック 常務執行役員 テクノロジー&マーケティング本部長 黛文彦氏

  • インテック万葉スクエア外観

    インテック万葉スクエア外観