また、無機化学の世界では不純物の少ない試料を作製することが、その材料固有の物性・性能を評価する上で重要であると一般的には見なされている。しかし、不純物がなければいつでも同じ性能を示すかというとそうではない。

そこで今回の研究では、明らかにされた機構をもとに、一般に性能に悪影響を及ぼすと考えられてきた目的相以外の不純物を影響が出ない程度の微量をあえて析出させ、系の熱力学的な自由度を奪うことで、イオン輸送性能のばらつきを1/3以下に抑えることに成功したとする。

  • 熱力学状態の影響

    熱力学状態の影響。(a・b)左右では熱力学状態が異なり、その際に付随して欠陥量やイオン輸送が変化する。この差異は一般の観測装置では見分けることが難しく、意図的に微量の不純物を混入させて系の熱力学状態を規定することで、その材料物性への影響を精査することが可能となった (出所:九大プレスリリースPDF)

なお、研究チームでは、今回の研究成果であるばらつきの熱力学的な要因は固体材料に普遍であり、リチウムイオン伝導固体を含むさまざまの固体電解質の輸送性能を担保する重要な戦略となることが期待されるとしている。