FTAを実施する際の流れと注意点

ここでは、実際にFTAを実施する際の流れと、各工程における注意点を簡単に紹介する。

トップ事象(望ましくない事象)の定義

まずは、FTAのトップ事象を定義する。すでに故障が生じてしまった場合には、その故障がトップ事象になる。一方で、設計段階で製品の信頼性確保のために行う場合には、影響の大きい事象を置くのが効果的だ。

本来は、さまざまなシチュエーションを網羅的にトップ事象に定義し、FTAを実施するのが望ましい。しかし実際には、限られた開発期間の中で最低限の事象を扱うことしかできない場合もあるため、トップ事象の定義は慎重に行う必要がある。

上位の事象が発生する要因の網羅的な抽出

トップ事象が定義できたら、その事象につながる要因を網羅的に抽出する。ここで、幅広い観点で抽出するために5M1Eの観点を利用するのが効果的である。また、さまざまな知見を取り入れるために、複数人で意見交換をしながら要因を抽出する方法が望ましい。

抽出した事象を上位事象とし、これ以上は展開ができないというところまで繰り返し抽出・展開を続ける。ここで要因を明確に抽出できないと、実際にトップ事象が発生した際に要因が明確にできず、NTF(No Trouble Found:再現しない不良)となってしまう可能性がある。

NTFになってしまうと、対策すべき箇所がわからないため、再発してしまう可能性が高い状態となる。NTFを割けるために、さまざまな観点、切り口からの抽出が必要だ。

発生頻度見積もり

トップ事象から、基本事象まで展開ができたら、各事象の発生頻度を見積もる。さらに、各事象の発生頻度から上位事象の発生頻度を見積もることで、対策を行うべき事象を明確にできる。

発生頻度は、実際にその事象が発生した際のデータを元にするのが望ましいが、現実には頻繁に故障が起きるわけではない。また、設計段階では、故障発生の頻度を算出するのに十分な試作品を作ることも難しい。

そこで、中間法、信用法、平均法、集積法、みなし法など、頻度を計算するためのさまざまな手法が開発されている。製品や状況に合わせて適切な手法を選択することで、発生頻度見積もりの精度を高めることが可能だ。

発生頻度を減らすための対策案検討と評価

トップ事象の発生頻度を減らし、設定した目標を達成するためには、各事象の発生頻度を減らしていく必要がある。各事象に対して発生頻度を低減するための対策を行い、発生頻度が低減したら、改めてトップ事象の発生頻度を評価する。

繰り返し確認しながら対策を行うことで、必要な品質を確保しつつ、過剰な対策によるコスト増や開発期間の長期化などを抑えることが可能だ。

まとめ

FTAは、不具合発生時だけでなく、製品開発をする過程で実施することで品質とコストのバランスを取った製品開発を実現できる。また、製品開発時に作成したFTAは、量産後に不具合が発生した際の助けにもなるツールだ。

今後、製品の自動化などが進み、今までよりも品質に重きが置かれる可能性があるため、設計品質を高めるツールとして、FTAを作成できる能力は重要になっていくだろう。