インフォアジャパンは6月10日、同社が提供する業界特化型のクラウドERP(Enterprise Resources Planning)のテクノロジー戦略に関するメディアラウンドテーブルをオンラインで開催した。同社はオンプレミスのERPのほか、AWS(Amazon Web Services)をクラウド基盤とした業界特化型のソリューションをSaaS(Software as a Service)で提供している。

これまで、業界特化を標榜し、個別の業界課題やニーズに合ったソリューションを2018年から提供してきたインフォアだが、ユーザーの生産性向上を後押しすべく、現在は3つの領域で技術アップデートを図っているという。

  • インフォアのテクノロジー戦略

1つ目が、ソリューションを導入してから価値創出までの時間を短縮させる「タイム・トゥ・バリュー」だ。

通常、業界向けのソリューションなどをベンダーから購入した場合、自社のシステムへのSI(システムインテグレーション)が発生し、社内のシナリオに合わせてソリューションの設定変更を行わなければならない。さらに特定の機能を実装したり、データの取り込み・解析・ダッシュボードでの管理のための設定を行ったりする必要がある。インフォアでは、SIや各種設定を製品の中で完結できるよう、統合されたソリューションを提供している。

米インフォア CTO(最高技術責任者) 兼 製品担当プレジデントのソマ・ソマスンダラム氏は、「SIから自社で対応するのに比べて、短時間、低コストで業務効率化のための機能を導入できる。タイム・トゥ・バリューを達成するために、ソリューションでは、当社の研究開発部門、コンサルタント・プリセールス、ユーザーとの間で、フィードバックをループさせることでプロセスやコンテンツを継続的に改善していく」と紹介した。

  • インフォア CTO 兼 製品担当プレジデント ソマ・ソマスンダラム氏

加えて、パートナーによる拡張機能の提供などが行える「マーケットプレイス」も提供する。例えば、インフォアが飲食・飲料業界向けのコンフィグレーションを開発した場合、パートナーはその上に乳製品に特化した拡張機能を開発し、マーケットプレイス上で提供することができる。ユーザーはマーケットプレイス上から、自社に合った拡張機能を利用できる。

  • 「タイム・トゥ・バリュー」を目指したソリューション提供の流れ

2つ目が、API(Application Programming Interface)、データ活用のサポートと、業務プロセスの改善だ。

商談/見積もり、販売・注文、出荷、請求、支払いといったビジネスプロセスごとに、複数社のSaaSが活用されているものだが、インフォアではそれらと機能連携するためのAPI開発・提供を進めている。

各ソリューションでは「イベントドリブンアーキテクチャ」と呼ばれるアーキテクチャを採用しており、ほぼリアルタイムに最新のデータを自動収集、データレイクに格納する仕組みとなっている。また、データのオブジェクトを相互につなげる「業界向けオブジェクト」も提供している。

このほか、ユーザーの業務プロセスを分析して同業界の平均的プロセスと比較し、どのようにすれば効率性を向上できるかアドバイスする「業界標準プロセス」の導入も進めている。

  • API、データ活用のためのアーキテクチャを採用。業務プロセスもアドバイス

3つ目が「Hyper Prductive User eXperience」(極めて生産性の高い顧客体験)の実現に向けた機能の提供だ。

各クラウドソリューションでは、製品アップデートをダウンタイムなしで実行できるようになった。また、ユーザーの利用時に「こうすればよくなる」というインサイト(気付き)を提案するナビゲーション機能も追加された。各種機能などはモバイルやタブレットでも同様に利用できる。

ユーザーインタフェースもメニューベースでなく、検索ベースに変更され、より少ないクリック数で従来の作業を実施できるようになった。

  • ユーザーの生産性を高めるため機能を拡張

このほかインフォアでは、カスタマーエクスペリエンスの向上に向けて、製品開発、カスタマーサポート、サービスデリバリ、パートナートレーニングなど、顧客と接点を持つ複数部署を「カスタマーエクスペリエンスソリューション」という部署に集約し、単一の窓口で問い合わせ対応ができるようにした。同部署では、「アカウンタブル・カスタマー・リーダー」という担当者が見込み客 既存顧客それぞれに付き、ユーザーと自社の橋渡し役となる。

ソマスンダラム氏は、同社の業界特化型ソリューションについて、「セキュリティ、API、インテグレーションなどの相互運用性、各業界のデータ・プロセスを利用できる点に加え、各ソリューションはAWSを活用してクラウド上に構築している点が特徴だ。そのため、ユーザーはAWS上のイノベーションをダイレクトに享受し、業界に先駆けた独自のイノベーションを実現できる」と語った。

インフォアでは、2021年のグローバルでのSaaS製品の売上高が10億ドルを超えた。売上高成長率、新規顧客ともに前年比20%増となり、地域別の成長率も2桁成長だった。

  • インフォアの2021年の売上高概況