IDC Japanは6月6日、国内通信サービスの市場予測を発表した。これによると、2026年の国内法人向けWANサービス市場は6363億円となり、2021年~2026年の年間平均成長率(CAGR)は-0.3%になるという。

  • 国内法人向けWANサービス市場 売上額と成長率の予測

同社は同市場の今後5年間について、L3(レイヤー3)ベストエフォート、イーサネット専用線、5G(第5世代移動通信システム)通信サービス、IoT(Internet of Things)通信サービスを中心に成長し、代替サービスへの切り替えが進むレガシー専用線を除くWANサービス市場全体では、成長率はわずかにプラスで推移すると予測する。

2021年の国内法人向けWANサービス市場は、2020年に引き続きL3ベストエフォートとイーサネット専用線が他のサービス種別よりも高い成長を遂げたという。売上額の前年比成長率は、ワイヤレスを除くL3ベストエフォートが2.4%、イーサネット専用線が6.4%だった。

L3ベストエフォートの成長の背景には、企業システムのクラウド・マイグレーションに加え、在宅勤務の拡大によるWeb会議の増加によって増大したトラフィックにコストを抑えながら対処する際に、帯域確保型に比べ安価に利用帯域を拡大できることがあると同社は見ている。

イーサネット専用線の利用では、データセンター間接続やパブリック・クラウド接続用途の回線が需要を牽引したという。データセンター事業者などの中間事業者によるパブリック・クラウド接続ネットワークの集約と、トラフィックそのものの増大によって広帯域化が進み、需要の中心が1Gbps品目から10Gbps品目へと移行しつつあるとのこと。

また、通信サービス市場に含まれる5G通信サービス市場や法人向けワイヤレスIoT通信サービス市場も順調に成長している。5G通信サービス回線数の2021年における前年比成長率は、304.8%だった。

現在販売中の携帯電話端末のほとんどが5Gに対応しており、これに伴い5G通信サービス市場も急拡大しているとのこと。3G停波を見越した端末の乗り換えが進んだこと、半導体不足の緩和によって出荷台数が増えたことなどが、5G通信サービス市場の伸びを後押ししたという。

法人向けワイヤレスIoT通信サービス市場も堅調に拡大しており、2021年における支出額の前年比成長率は13.6%となった。市場拡大を牽引しているユースケースは、コネクテッドカー、電力スマートメーター、LPガス検針など、多数のエンドユーザーを抱える企業による利用とのこと。

一方で、IoT通信サービスの通信料金は低廉であり、デジタル・トランスフォーメーション(DX)プロジェクト全体から見れば、ユーザー企業の投資に占める割合は必ずしも高いわけではないという。より大きな部分を占める、DXプロジェクトによる経営改善効果に対する対価を自らの収益とするため、通信事業者は自ら経営改善提案能力を獲得すべきであると同社は考えている。