東京大学(東大)は6月3日、理論的解析と数値シミュレーションにより、平面上で静止するパターンが曲面上では一方向に伝播することを発見したと発表した。
同成果は、東大大学院 総合文化研究科 広域科学専攻の西出亮介大学院生、同・石原秀至准教授(東大 生物普遍性連携研究機構 准教授兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、米物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。
パターンはさまざまな場所で現れるが、どこで現れるかによって、パターンの形や振る舞いが変わってくる。そうした中、近年になって曲面上に現れるパターンに対して、曲面の形状やその曲率がどのような影響・効果をもたらすのかについての興味が持たれている。
そして、曲面の空間構造がパターンの決定に重要な因子であることが明らかにされつつあり、たとえば、パターンの位置や形状が曲面形状に応じて変調を受けること、曲率によってパターンの分裂が起こることなどが報告されている。曲面とパターンダイナミクスの関係を理解することで、現象の理解を深め、曲面形状を用いたパターン制御機構などの応用へとつながるという。しかし、曲面がパターンやそのダイナミクスに与える影響の理解はまだ発展途上といえ、わからないことも多い。
そこで研究チームは今回、曲面とパターンダイナミクスの関係を調べるため、曲面上において、数学者のアラン・チューリングが提案した方程式系により作られる「チューリングパターン」を数値シミュレーションにより調べることにしたという。