トヨタ自動車と、その子会社であるウーブン・プラネット・ホールディングスは6月2日、生活圏のさまざまな用途での水素エネルギー活用に向け、持ち運びが可能なポータブル水素カートリッジのプロトタイプを開発したと発表した。

  • ポータブル水素カートリッジのプロトタイプ

    ポータブル水素カートリッジのプロトタイプ(出典:トヨタ自動車)

利用時にCO2を排出しない水素エネルギーは、燃料電池システムと組み合わせて発電するだけでなく、燃焼によってもエネルギーを生むことが可能で、将来的により多くの用途で使用されることが期待されている。

現在は、水素エネルギーは主に肥料製造や石油精製工程など工業・産業用途で使用されているが、使用環境ごとに安全基準が異なることなどが課題となり、日々の生活を支えるエネルギーとしての広範な利用には至っていない。

政府は現在、安全を担保しながら迅速に水素の利活用を進めるための検討を進めており、トヨタとウーブン・プラネットも、積極的に協力していく考えだという。両社は、静岡県裾野市で建設が進むWoven Cityおよびその近郊で、水素の「つくる」「運ぶ」「使う」という一連のサプライチェーンの実証をENEOSとともに実施する予定だ。

さらに両社は今回、水素の使用量・使用用途の拡大やさらなる水素需要の創出、また水素サプライチェーンの構築に向け、持ち運びが可能な水素カートリッジの開発に至ったという。

今回開発された水素カートリッジは、直径約180mm、全長約400mmのポータブルなサイズで、生活圏でもパイプラインなしで持ち運ぶことができるという。また質量の目標は約5kgだとしている。

  • 生活圏でも持ち運び可能なサイズとなっている。

    生活圏でも持ち運び可能なサイズとなっている。(出典:トヨタ自動車)

また同製品は、幅広い用途への適応に向けた汎用性の高い仕様で、容易に交換が可能ですぐに使用できるというメリットがあるとした。また、小規模なインフラでの対応が可能なため、災害時における孤立地域や未電化地域へのエネルギー供給にも貢献できる可能性があるという。

今後同製品は、高圧水素タンクの前提で設計・開発を進め、Woven Cityをはじめとするさまざまな場所での実証を通じて、実用化に向けた検討を行うとしている。

また将来的には、Woven Cityでモビリティやさまざまなアプリケーションなどに水素エネルギーの使用を検討するとともに、さらなる水素カートリッジの可能性を模索しながら、新たな水素サプライチェーンの構築を目指すとのことだ。

  • 水素カートリッジの使用イメージ

    水素カートリッジの使用イメージ(出典:トヨタ自動車)

なお、今回発表された水素カートリッジのプロトタイプは、6月3日~5日に富士スピードウェイで開催される「スーパー耐久シリーズ2022 第2戦」の会場で展示される。