山口大学は5月31日、およそ2億5000万年前、全生物の90%以上が滅んだとされ、地球史上最大というペルム紀末大量絶滅の直後の時代である前期三畳紀の堆積岩に含まれる有機分子を分析したところ、これまではペルム紀末大量絶滅のときにしか見られなかった海洋生態系の崩壊を示す分子化石が含まれることを発見したと発表した。

また、同時期における大規模火山活動の記録と照らし合わせることで、これら海洋生態系崩壊を示す分子化石が、大規模火山活動と同時に発生していることを発見し、海洋生態系の崩壊が火山活動と関連があることを推定したことも併せて発表された。

同成果は、山口大大学院 創成科学研究科 理学系学域の齊藤諒介助教らの研究チームによるもの。詳細は、古環境地球科学に関する全般を扱う学術誌「Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology」に掲載された。

およそ40億年に及ぶ地球の生命の歴史において、これまで5回の大量絶滅が発生したことがわかっている。その3回目に当たる約2億5000万年前のペルム紀末の大量絶滅は地球史上最大とされ、三葉虫や腕足類、フズリナをはじめ、陸上・海洋合わせて90%以上の種が絶滅したという。その一方で、それを生き延びた二枚貝や巻貝が後に多様化していった。

ペルム紀末大量絶滅の原因は、超大陸パンゲアの北東、現在のシベリアで発生して長期間続いた大規模火山活動が主要因であるとされる。それに伴う日光の減少、大量のCO2の放出による大気成分の激変、その結果の気候変動などが生態系を崩壊させたと考えられている。また原因は不明だが、同大量絶滅の特徴の1つは回復過程が異様に遅いことが挙げられている。

ペルム紀末大量絶滅直後の時代である前期三畳紀は、大量絶滅の余波により生態系がどん底にあったため、古生物学者から“最も退屈な時代”といわれるほど化石の産出が少ないという。化石記録が乏しいため、前期三畳紀の火山活動がどのように当時の生態系に影響を与えていたかも不明だったとする。

そこで研究チームは今回、ペルム紀末-前期三畳紀の堆積岩を中国の地層から採取し、分子化石の分析を行うことにしたという。分子化石とは、生物の死後も難分解性の有機分子として堆積物中に残る有機分子のうち、その起源生物を特定できる分子サイズの化石のことをいう。その結果、ペルム紀末大量絶滅時の地層に特異的に産出する分子化石「C33ノルマルアルキルシクロヘキサン(C33)」が発見された。