理化学研究所(理研)と東京大学(東大)は5月26日、シンクロトロン放射光X線マイクロCT(SRXμCT)を用いて、中期デボン紀(約4億年前)の分類が不明だった謎の脊椎動物「パレオスポンディルス(Palaeospondylus gunni)」の化石の頭骨の形態を精密観察し、この動物が陸上脊椎動物の祖先と近縁であったことを発見したと発表した。

同成果は、理研 開拓研究本部 倉谷形態進化研究室の平沢達矢客員研究員(東大大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻 准教授兼任)、同・倉谷滋主任研究員(理研 生命機能科学研究センター 形態進化研究チーム チームリーダー兼任)、オーストラリア国立大学のフー・ユチ大学院生(研究当時)、国立科学博物館(科博) 標本資料センターの真鍋真コレクションディレクター(科博 分子生物多様性研究資料センター センター長兼任)、高輝度光科学研究センター 散乱・イメージング推進室の上杉健太朗主席研究員、同・星野真人主幹研究員らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。

パレオスポンディルスは、英国スコットランドにある中期デボン紀の湖に堆積した地層から産出する化石種で、全長5cmほどの小さな動物として知られている。ヌタウナギやヤツメウナギなど、顎を持たないグループである円口類を想起させる特徴がある一方で、背骨がよく発達しており、顎を持つ脊椎動物の中の後から進化したグループによく見られる特徴も持つ。

この「キメラ的」な特徴のため、1890年に初めて報告されて以降、脊椎動物のどのグループに属するのか定まらず、これまでに円口類、サメやエイなどの軟骨魚類、初期の顎を持つ脊椎動物(板皮類)の幼生、ハイギョ(肉鰭類)の幼生、両生類の幼生など、さまざまな系統的位置に置かれてきた。

パレオスポンディルスは、分類の鍵となる形態的特徴が集まっている頭骨の長さはわずか5~6mmしかない。しかし、化石は岩石の割れ目表面にその一部が露出した状態で見つかるという性質上、その多くが採集された時点ですでに骨格の一部が破損しているケースが多い。そのため、これまでの研究では、頭骨の完全な形態を精密に観察することが不可能だったという。

そこで研究チームは今回、頭骨が完全に岩石中に保存されている状態のパレオスポンディルスを研究するために、頭部が母岩に埋まったままで尾部だけが岩石表面に露出している化石を探すことにしたとする。過去に採集された約2000点の化石が調べられ、条件を満たすものが2点確認された(どちらも科博で登録・収蔵)。