北海道大学(北大)、岡山理科大学、中川エコミュージアムセンターの3者は5月9日、北海道中川町の白亜紀後期カンパニアン期(約8300万年前)の地層・蝦夷層群オソウシナイ層から2000年に発見された恐竜化石が、マニラプトル類の中でも、進化型のテリジノサウルス類(テリジノサウルス科)であることを明らかにし、新属新種として「パラリテリジノサウルス・ジャポニクス(日本の海岸に棲むテリジノサウルスという意)」と命名したことを発表した。

  • 北海道中川町から発見されたパラリテリジノサウルス・ジャポニクスの復元画

    北海道中川町から発見されたパラリテリジノサウルス・ジャポニクスの復元画 (c)服部雅人氏 (出所:プレスリリースPDF)

同成果は、北大 総合博物館の小林快次教授、岡理大の高崎竜司研究員、北大のアンソニー・フィオリロ客員教員(米・サザンメソジスト大学兼務)、中川町エコミュージアムセンターの疋田吉識センター長らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

テリジノサウルス科の恐竜は獣脚類の恐竜で、1メートル近くの大きな爪を持っていたと考えられ、その全長は10メートルにも達したと推測されている。その仲間であるテリジノサウルス類は、白亜紀前期に多様化を始め、白亜紀後期になるとアジアで多くの種類が生まれたとされている。進化とともに肉食・雑食から雑食・植物食に食性を変えていき、それとともに巨大化していったとも考えられている。

テリジノサウルス類の化石は、主にモンゴルと米国の白亜紀の地層から発見されている。白亜紀当時、アジア大陸の東縁に位置していた日本からは、白亜紀前期の篠山層群から歯の化石、白亜紀後期の御船層群から歯や脳函、上腕骨が発見されている。

そして2000年秋に、中川町の遠藤富士幸氏によって、天塩川水系の安平志内川支流のルベシベ川流域にて、蝦夷層群オソウシナイ層から流れ出たものと考えられる骨の含まれたノジュール(生物由来の球状コンクリーション)が発見された。

調査の結果、この化石は恐竜類獣脚類右手の化石であることが判明し、2006年には早稲田大学(早大)などの研究チームによって、テリジノサウルス科のものと報告された。しかし同研究チームは2008年には、テリジノサウルス科との類似性が議論されるものの、同定はより広い分類であるマニラプトル類と修正する論文も発表。当時は、追加標本がないとこれ以上の議論は難しいとされた。