熱と乱流の関係を調べるためには、それらがどれくらいの速さでプラズマ中を移動していくかを計測する高度な機器が必要だが、核融合研では、世界最高レベルの計測機器を開発してきており、今回の研究ではそれらと、ハートッグ教授の協力を得て開発された計測機器などを駆使することで、熱の伝搬速度と乱流の移動速度の計測が行われた。

これまで熱と乱流の速度は、およそ時速5000km(マッハ4)で、ほぼ一緒に移動すると考えられてきたが、今回の実験からは、およそ時速4万km(マッハ32)で熱よりも極めて高い速度で大きく先行して移動していく乱流が確認されたという。時速4万kmは、ほぼ地球の重力を振り切って脱出できる第二宇宙速度に等しい速度である(第二宇宙速度は秒速11.2km=時速40,300km)。

  • プラズマ中に堰を形成し、熱を内側に閉じ込める

    (左)プラズマ中に堰を形成し、熱を内側に閉じ込める。(右)堰を壊すことで、プラズマの内側から熱が逃げていく際に、熱よりも速く移動していく乱流が発見された (出所:核融合研Webサイト)

研究チームによると、この発見は核融合プラズマの乱流の理解の進展に役立つとするほか、今回の成果を踏まえ、予兆となる乱流を観測することで、プラズマの温度変化を予知できる可能性があることが示されたことから、今後は、これをもとにプラズマの温度をリアルタイムで制御する手法の開発につながることが期待されるとしているとするほか、乱流と熱は自然界においても深い関係があることから、そうした自然界の乱流現象の理解にもつなげていきたいともしている。