神奈川県立がんセンター(KCC)、久留米大学、味の素、日本医療研究開発機構(AMED)の4者は5月16日、治療前の血液中のアミノ酸プロファイルを調べることで、免疫チェックポイント阻害薬治療(がん免疫療法)が有効な患者を選別できることを明らかにしたと発表した。
同成果は、久留米大 医学部医学科内科学 呼吸器神経膠原病内科部門の東公一准教授、KCC 臨床研究所の項 慧慧特任研究員ら16名の研究者が参加した共同研究チームによるもの。詳細は、腫瘍免疫学とがん免疫療法に関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Journal for ImmunoTherapy of Cancer」に掲載された。
外科手術、化学療法(薬剤)、各種放射線治療に続いて登場した第4のがん治療戦略である免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1/PD-L1抗体)だが、その臨床的効果は、患者により異なることや重篤な有害事象を合併することもあるため、効果の期待できるがん患者だけを選別する「個別化免疫治療」の開発が望まれているという。
また、高額でもあるため、有効な患者を選別するバイオマーカーの開発は医療経済的にも重要な課題とされている。現在、抗PD-1/PD-L1抗体治療におけるバイオマーカーとして、腫瘍組織でのPD-L1発現や遺伝子変異の多寡などが用いられているが、その臨床的評価は定まっていないとされるほか、腫瘍組織を用いた解析であるため、患者に対して大きな侵襲を伴うこともあるため、容易に採取可能な末梢血を用いて測定できる新しいバイオマーカーの開発が求められているという。
アミノ酸はタンパク質・核酸などの生体成分の基本的物質であり、またエネルギー源として利用される普遍的な栄養素と知られている。免疫細胞の機能制御にも必須であり、がん細胞の増殖にも関与していることから、研究チームは今回、血中アミノ酸・代謝物パラメーターの組み合わせを用いてがん患者の免疫状態を把握し、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を予測できるかどうかを検討することにしたという。