日産自動車、JVCケンウッド、フォーアールエナジーの3者は4月26日、日産の電気自動車(EV)「リーフ」の再生バッテリーを利用したポータブル電源の試作品を公開し、実用化に向けた共同開発を進めていくことで合意したことを発表した。

  • 試作されたポータブル電源

    日産のEV「リーフ」の使用済みリチウムイオン電池から再生されたリチウムイオン電池を用いて試作されたポータブル電源 (出所:日産Webサイト)

リチウムイオン電池(LIB)は、リチウムのほか、正極材料の種類によってはコバルトやニッケルなど、資源埋蔵量が少なく、また産出国にも偏りがあるレアメタルが使われていることから、現在、正極材料のレアメタルの使用量削減や使用量ゼロにする研究、電解液や固体電解質などにリチウムを使用せずに埋蔵量のより豊富な資源を用いるポストリチウムイオン電池といった研究が進められている。

しかし、全固体電池も含め、まだしばらくはLIBが2次電池の主流であり続けることが予想されている一方で、世界のEV生産台数は年々増加傾向にあり、このまま需要の増加が続けば、早ければ2020年代半ば、遅くても2030年前後にはリチウムやコバルトの需要が供給を上回ることが懸念されるようになっている。

こうした背景から世界的に、使用済みリチウムイオン電池の再生利用に向けた動きが加速しており、中でもEVに搭載されているリチウムイオン電池は大型のため、重要な“都市鉱山”と考えられている。特に日産が2010年から販売している量産EV専用モデルであるリーフは、現在までに全世界で60万台弱が販売されており、巨大な都市鉱山と見ることができる。

欧州などでは、EVの使用済みリチウムイオン電池を車載用リチウムイオン電池として再生する専用工場なども建設されているが、今回の取り組みは、リーフの使用済みリチウムイオン電池を再生し、新たにポータブル電源用バッテリーとして搭載する計画としている。

今回の共同開発にあたり日産は、ポータブル電源の企画立案と自動車開発で培った車載環境での使用を実現するためのノウハウを提供するとしている。また、ポータブル電源の実績を有するJVCケンウッドは、カーナビゲーションやドライブレコーダーなどの車載機器やポータブル電源の開発で培った技術と知見を活かし、安全性はもちろん、使用済みバッテリーの再利用に最適化した設計と製品開発を行うという。

そして、リーフの再生リチウムイオン電池を取り扱っているフォーアールエナジーは、使用された後でも高い残存性能と安全性を持ち、製造時にCO2の発生のないバッテリーを、ポータブル電源で二次利用するための開発を行うとしている。

  • リーフの再生バッテリーセル

    後方に見えるのが、リーフの車載バッテリーユニット。EVでは航続距離を求められることから、大量のリチウムイオン電池のバッテリーセルが搭載されている。画像左下は、リーフの再生バッテリーセル (出所:日産Webサイト)

なお、3社は再生バッテリー利用のポータブル電源の商品化に向け、開発を加速させると同時に、EVの再生リチウムイオン電池を活用し、低炭素社会・サステナブルな社会の実現に向け、取り組んでいくとしている。