その結果、先行研究と同じ温度範囲においては、同様に温度の低下とともに有効磁場は増加するが、その温度範囲よりも低温になると、2つのピークを持つ特異な温度依存性を示すことがわかったという。

また、有効磁場の大きさは従来原理に基づく計算値よりも大きいことから、SrRuO3における有効磁場は従来原理では説明できないことも判明したほか、ワイル点に起因した新原理トルクの理論値と実験結果の比較から、その有効磁場の特異な温度依存性と大きさは、新原理トルクでよく説明できることがわかったとした。

  • 単位電流当たりに誘起される有効磁場の温度依存性を記録したグラフ

    (左)単位電流当たりに誘起される有効磁場の温度依存性を記録したグラフ。(右)単位電界当たりに誘起される有効磁場の実験値と新原理の理論値の比較 (出所:北大プレスリリースPDF)

これらの結果は、SrRuO3での電流による磁壁移動は、ワイル点に起因した新原理トルクが主要因であることを示すものであるとするほか、この新原理トルクによる有効磁場は、これまでに理論的には示されていたが実験的には検証されておらず、今回の研究で初めてその有効磁場の観測に成功したとする。

また、この単位電流あたりに発生する有効磁場は、一般的な磁石において従来機構により誘起される単位電流当たりの有効磁場よりも1~2桁大きいため、この新原理トルクを用いることで、電流での高効率な磁壁の移動が可能になることが期待されるとするほか、SrRuO3と同様に近年ワイル点を持つ磁石は比較的多く見つかっていることから、このような磁石をMRAMに適用することにより、省電力化につながることが期待されるともしている。