東京大学(東大)は4月15日、ファインケミカルズ(医薬品・化成品・農薬などの精密化学品)の製造などに適用することができる芳香環類の水素化反応のために、新たに開発した協調触媒系が従来法に比べ最大でおよそ30倍の反応加速効果を示すことを見出したと発表した。

同成果は、東大大学院 理学系研究科 化学専攻の宮村浩之助教、同・小林修教授らの研究チームによるもの。詳細は、独化学会の刊行する公式学術誌のインターナショナル版「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。

芳香環類またはヘテロ原子を含む芳香環類の水素化反応は、有機ハイドライド法を用いた水素貯蔵および輸送を指向した応用への活用が可能なため、水素社会への移行を実現する上で重要な反応とされるほか、ファインケミカルズの製造においてもなくてはならない反応として知られている。

しかし、かさ高い置換基を複数有する芳香族化合物や、かさ高く電子豊富な芳香族化合物の水素化は困難で、高温高圧といった過酷な反応条件を必要とし、温和な条件で機能する、より効率的な合成法の開発が求められていたという。

そうした中、省エネルギー・省物質といった観点から注目されているのが、複数の触媒で別々の基質をそれぞれ活性化する協調触媒系であるという。これは、相乗的に遷移状態の活性化エネルギーを低減化でき、温和な反応条件下、少ない触媒量をもって、高難易度の反応を進行させることが可能だとされ、現在のところ協調触媒系は主に均一系触媒で開発がさかんに行われているというが、回収・再使用が可能で、一層の省資源、省物質を可能とする不均一系触媒における協調触媒系の開発はいまだ発展途上だという。