分子科学研究所(分子研)は4月4日、「革新的多元素ナノ合金触媒・反応場活用による省エネ地域資源循環を実現する技術開発」を開始したと発表した。

分子研は国立大学法人法によって設立された大学共同利用機関法人である自然科学研究機構(NINS)傘下の組織。NINSは、国立天文台、核融合科学研究所、基礎生物学研究所、生理学研究所などで構成されている。

同研究は、環境省が2022年度から始めた「地域資源循環を通じた脱炭素化に向けた革新的触媒技術の開発・実証事業」に採択されたもので2022年度から2029年度まで実施される予定だ。京都大学が代表事業者を務め、共同実施者として分子研が参加している。

分子研は、京都大学大学院理学研究科の北川宏教授グループと早稲田大学理工学術院の関根泰教授グループが開発している多元素ナノ合金触媒と非在来型低温触媒プロセスを融合させた研究成果・技術成果をもとに、「メタンと水の混合系から水素を高効率に生成させる次世代化学反応プロセスを実現させる新触媒などの研究開発を目指す」と分子研の担当者である杉本敏樹准教授は説明する。

同研究の目標となる「次世代化学反応プロセスを実現させる新触媒」とは、低温反応環境下で、水素を大量製造するために「外場の下で触媒表面に導入した電荷によって非熱的にメタン分子と水分子を酸化することによってプロトン(原則的には水素原子から電子を取り除いたH+(水素イオン)を意味する)をつくりだし、表面プロトニクスを制御して高効率に水素分子生成することがポイントになる」と、杉本准教授は目指している研究開発内容を説明する。

そのポイントとなる模式図として下記図を公表している。

  • 研究開発目標となっている次世代化学反応プロセスを実現させる新触媒の模式図

    研究開発目標となっている次世代化学反応プロセスを実現させる新触媒の模式図(引用:分子科学研究所)

模式図によると、バイオマスや水からLPGや水素などの製造とその実証、およびエネルギー循環システムの社会実装を目指すようだ。