具体的には、2台のMRI装置を用いて(装置1・2)、人工知能の訓練データとして合計161名(ギャンブル障害患者70名、健常対照群91名)の研究対象者からrsfMRIを収集し、各対象者の安静時脳機能結合を計算(9730本)。

この情報にATR BICRLで開発されたAI技術を適用したところ、ギャンブル障害の診断に関わる15本の脳機能結合と、それぞれの結合の重み付け情報から診断のためのバイオマーカーとなる数値的指標が算出され、判別器を作製することに成功したという。作製された判別器を用いた、訓練データにおけるAUCは0.89(1に近いほど優れた判別法であることを示す)であり、高い判別性能が示されたとした。

また、判別器の汎化性能を検証するための独立した外部データとして、訓練データの161名とは異なる20名(ギャンブル障害患者6名、健常対照群14名)の研究対象者のrsfMRIを訓練データとは別のMRI装置(装置3)を用いて収集し、安静時脳機能結合の情報に判別器を適用したところ、独立した外部データに対する判別器のAUCは0.81と導き出されたという。

MRI装置は3台とも撮像方法が異なっていたが、高い判別性能が示されたことから、判別器は汎化性能を有すると判断されたと研究チームでは説明しており、今回開発された判別器は、幅広い施設においても利用できることが証明されたとしている。

なお、今回の研究成果により、ギャンブル障害の診断において判別器を用いて生物学的情報に基づいて診断するという新たな切り口が加わり、適切な診断の一助となることが期待されると研究チームでは説明している。今後については、今回の研究結果を直接的に利用する「ニューロフィードバック」といった新規治療法の開発も期待されるとしているほか、判別器を、脳へのダメージもある各種物質依存にも適用することで、依存症に共通する、依存による本質的な脳の変化と、依存物質による脳へのダメージを切り分けるなど、依存症全般の脳における病態を理解することの一助になる可能性があるともしている。

  • MRIを用いて収集されたバイオマーカー

    (左)2台のMRI装置を用いて、人工知能の訓練データとして合計161名の研究対象者からrsfMRIが収集された。(右)第3のMRI装置を用いて収集された合計20名の独立データを判別器に適用したところ、AUCは0.81で、汎化性能を有すると判断された (出所:京大プレスリリースPDF)