ガートナージャパンは4月14日、日本企業のCIO(Chief Information Officer、最高情報責任者)が2022年にデジタル・ビジネス推進に向けて注力すべきアクションを発表した。同社は「CIOとIT部門の役割」「人材と組織」「ITコスト管理」の3つの観点から、注力すべきアクションを提言する。

CIOとIT部門の役割

CIOとIT部門の役割では、社内外での信頼関係の構築、組織文化とスキルの構築、グループIT組織全体の役割の再定義が挙げられた。CIOとIT部門には、イノベーションを推進しやすくするために、現場でリスクを取って創造や探求ができる文化やスキルを構築することが求められる。また、データ活用とデータ分析の能力を構築し、データに基づくコミュニケーションや意思決定を促進することが重要だという。

同社バイスプレジデント 兼 ガートナー フェローの藤原恒夫氏は、「CIOとIT部門は、内製化およびアウトソース、そしてIT子会社を含めたグループ企業会社全体のIT組織の役割の整理と再定義を行うことが重要だ。そのために、ベンダーやパートナーも含めたIT関連全体の役割とそれぞれの役割分担を見定め、エコシステム全体で戦略を確立することが求められる」と述べた。

人材と組織

人材と組織では、IT人材の役割と責任の見直し、EVP(従業員価値提案)の要素の設定、IT部門のチーム再構築を推奨した。

IT人材の獲得競争が激化している中では、人材採用と並行して社内に存在する潜在的なITスキルなどが高い人材の成長・活躍・定着が必要だという。全社的なスキルの保有と分散では、IT部門の目指す方向と役割を明確にし、ITおよびビジネス部門双方で必要なスキルと能力を整理することが重要となる。IT部門以外の事業部内で従来のIT業務をこなす「ビジネス・テクノロジスト」も含めた、テクノロジー人材のスキル向上と役割分担の明確化も求められるという。

他方で、同社の調査によれば、IT部門の従業員は、給与以外に「成長、キャリアなどの『機会』」と「同僚や上司の『能力』」を重視しているのと同時に、不満にも思っていることが明らかになったという。

同社ディスティングイッシュト バイス プレジデント 兼 ガートナー フェローの足立祐子氏は、「これらの要素は、IT人材の離職や採用の障害にもつながることがある。自社にとってのEVPの要素を特定し、データを基に満足度を向上させていくことで、従業員の定着率の改善や、外部の優秀なIT人材の獲得を優位に進めることも可能になる」と分析した。

ITコスト管理

ITコスト管理では、コスト管理の在り方の変更とともに、柔軟に対応できるコスト管理手法の導入に取り組むべきだという。

クラウド・サービスの利用料とデジタル変革のための実験開発コストは、会計上はOPEX(Operating Expenditure、営業費用)であったとしても従来のOPEXとは位置付けが大きく異なることから、同社シニア ディレクターの片山博之氏はIT関連コストを、「CAPEX(Capital Expenditure、資本支出)」「クラウドと実験開発費のOPEX」「それ以外のOPEX」の3つに分けて管理することを推奨する。

「経営者には、ITコストを変革 (Transform)、成長 (Grow)、運営 (Run) のようなビジネス目的ごとに分類し、増やすべきコストと減らすべきコストを明確にして見せるとより効果的だ」(片山氏)

一方、デジタル変革のためのコストは事前に要件定義を確定できないうえ、従来の予実管理の手法が使えないため、実験開発予算の決め方の問い合わせがガートナーでは増えているという。

この点について、片山氏は「デジタル変革のための実験段階のコストについては、進めながら成果を予測し予算規模を決めていくなど、柔軟な新しいコスト管理手法を用いることを推奨する。場合によってはCEOの権限の下で、予算というよりも資金(ファンド)を拠出するというやり方も検討できる」と説明した。