ガートナージャパン(Gartner)は3月23日、日本の産業別IT支出予測を発表した。同社は、2022年の日本におけるエンタープライズIT支出総額が、2021年から5.4%増の27兆2682億円に達する見通しを示した。

2021年は、産業によって業績の明暗が分かれ、全体では新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の影響により、IT投資が減少した2020年から回復が見られた。2022年は、より広範な産業での投資回復が見込まれるという。

2022年に最も高い成長が見込まれているのは銀行/投資サービス(8.0%)で、小売(7.4%)、通信/メディア/サービス(5.9%)が続く(以下の表を参照)。

  • 日本の産業別IT支出予測 (単位:億円)、出典:Gartner (2022年3月)

2022年は、教育でGIGAスクール関連支出の反動減が見込まれるものの、各産業でニュー・ノーマル (新たな常態) への対応が進むことにより、教育を除く全ての対象産業におけるIT支出はプラス成長となる見通し。最も増加が見込まれるのは銀行/投資サービスであり、引き続き自動化・省力化によるコスト削減が優先されるほか、顧客の新たなニーズ対応のためのデジタル化投資が進むと予想される。

小売では、企業規模や業態によって投資を手控える傾向が見られるものの、店内オペレーションの効率化や非接触型サービスの強化とともに、ニュー・ノーマル下での消費者の行動変容への対応や顧客体験向上のための投資が見込まるという。2020~2021年前半までの落ち込みが大きかったことの反動もあり、小売は産業別で2番目に高い成長率となる見通しだ。

通信/メディア/サービスは、オンライン・コンテンツの利用拡大やリモートワークの定着によるインフラ投資が拡大するとGartnerは予測している。加えて、COVID-19の影響が大きい集客型業態においても、バーチャル技術の活用やリモート環境の強化、人流解析の高度化が進んでいることにより、パンデミック前の業務レベルに回復しつつあることを背景とする投資増が見込まれるという。

アナリストの成澤理香氏は、「2022年は引き続き短期的なCOVID-19対応への投資が先行するものの、ニュー・ノーマルに適合した新たな製品やサービス、オペレーションの実現に向けて、さまざまな業種や企業規模においてデジタル関連投資が本格化することが予想される。一方で、二極化の傾向もより鮮明になっている。経済回復に先んじてデジタル投資に取り組む企業とそうでない企業の差は今後さらに拡大し、定着する恐れがある。二極化が進む業界や領域においては、隣接する業界/業種や異業種、社会、個人との連携を視野に入れたエコシステムを形成し、協業することで、新たな価値を提供することも検討すべき」と述べている。