また、こうした現象は、ヒトと同様に肩幅は広いが、四足歩行で産道の広いチンパンジーや、そもそも肩幅の狭いマカクザルには見られず、二足歩行で産道の狭いヒトだけが持つ難産緩和のメカニズムだと考えられると研究チームでは説明しているほか、この鎖骨の出生に合わせて成長を減速させ、出生後に成長を再加速させるという成長パターンは、同じ難産の要因である頭蓋骨の成長パターンと比べても特殊だともしている。ヒトの場合、頭蓋骨の成長の減速が始まるのは出生の直前であり、多種と比べてタイミングが遅い点では特徴的ながら、成長が減速したら再加速することはないという点、出生前に減速が始まるという点ではチンパンジーやマカクザルと共通であることから、こうした現象はヒトに限らず難産緩和に関連していると考えられている。

一方、今回の研究から、鎖骨ではヒトだけが出生に合わせた成長の減速、そして出生後の再加速というユニークな成長パターンを進化させてきたことが明らかにされることとなった。研究チームでは、実は肩にこそ、ヒトのユニークさが表れているともいえるとしている。

なお、研究チームでは、ヒトが肩の特殊な成長パターンを獲得したのがいつだったのかの調査も実施。ヒトはおよそ600~700万年前に、共通の先祖からチンパンジーと袂を分かったとされるが、化石の形態から、広い肩幅の起源は約350万年前の猿人段階にまで遡ると考えられるものの、これは脳の著しい大型化が起きる以前のことで、こうした調査結果から、特殊な成長パターンの獲得という点で肩が頭より先にヒト化したという仮説を立てているとしており、今後さらに詳しく検証する必要があるとしている。

  • 今回の研究の概要のイメージ

    今回の研究の概要のイメージ。胎児は出生が近づくと鎖骨の成長を減速させ、出生後にそれを補うように成長が再加速する。(c) 川田美風 (出所:京大プレスリリースPDF)