富良野市は市内に焼却施設を持たず、ゴミのリサイクル率が90%と高水準を維持している。市民のリサイクルに対する意識が高い一方で、一定の量の不適切な分別が発生していることが長年の課題となっている。

時期・地域別に合わせた通知アプリを

そこでリサイクルチームは、日々のゴミ回収時に、分別不良の袋に貼付される不適物警告シール「だめシール」のデータに着目。富良野市内にある約600カ所の資源回収ステーションの曜日ごと、品目ごとの資源回収ステーションデータから、分別が不適切だったことを示すデータや現地視察、収集担当者からのヒアリングの結果をもとに、不適切な分別の発生率の低減につなげる施策について考えた。

  • リサイクルチームのプレゼンの様子

彼らが導き出した施策はこうだ――「時期・地域に合わせた通知アプリを開発し、市民の意識向上、収集作業の効率化につなげる」

リサイクルチームはまず、富良野市からもらった過去3年間の「だめシール数」のデータを解析。その結果、「だめシール」は4月に最も多くみられ、その後減少傾向にあることが分かった。

  • だめシールが貼られた未分別のゴミ袋

  • 時期に関するデータ解析

そして、地域によってだめシールの数に大きく差があることにも気付く。大多数の地区は適切に分別できており、1000以上のステーションでだめシール数(3年間の集計)が60枚を超えるのは10ステーションのみであることが分かった。学生らは「周辺の住宅事情も関係しているのではないか」と考え、その中でも突出して多い2つのステーションの現地を視察した。

  • 地域に関するデータ解析

  • だめシールが多いステーションを視察

すると、だめシールが多いステーションの付近には、新興住宅地やアパート、マンションリゾート地が立ち並んでいることが分かった。「4月からの新生活を始める人がゴミ分別を理解できておらず、人口密集地や転入者、旅行者が多い地区でだめシールの数が多い」と仮説を立て、「時期・地域に合わせた通知アプリ」の開発を提案した。

学生らは、アプリを通じてどのような情報をどのタイミングで通知するのかを考え、市民が不快にならない伝え方を模索した。だめシール数をグラフ化した情報を伝えるだけでは意味がないと考えた彼らは、特定のゴミの日の前に情報提供を行い、クイズやゲームで楽しく伝えられるコンテンツを用意するといった具体案を提案した。

  • 特定のゴミの日の前に情報提供を行う案

  • アプリ内のクイズやゲームで楽しく周知する案

「分別に関する○×クイズをアプリ内で提供し、そこで得られた正答率もデータとして蓄積し、正答率の低い問題の解説情報を提供するのはどうだろうか」と説明。だめシールが減ったかどうかを評価項目とし、通知が市民の負担になりすぎないかどうかを評価するために市民へのアンケートを実施することも提案した。

  • リサイクルチームが考えた実証実験の全体像

それだけでなく、彼らはゴミ収集員の業務プロセスの改革まで踏み込む。現在、富良野市のゴミ収集員は、手作業でだめシールを回収できないゴミに貼り付けており、未回収の理由が曖昧に記録されているという。

そこでリサイクルチームは、収集員にタブレットを配布し、専用アプリにてだめシールの集計を行うといった施策を提案した。「GPSの位置情報からステーション情報を割り出し、曜日からゴミ情報を自動で取得する。未回収理由に関しては選択肢を設け、タブレットに直接記録する」(学生)

  • タブレットと専用アプリで収集員の業務を改善する

そうすることで、「収集員は簡単にデータを記録することができ、富良野市は詳細なだめシールの情報を取得することができる」と主張した。

リサイクルチームの提案をまとめると、以下の通りだ。

・アプリを通じて時間帯・頻度など方法を変えて情報提供する
・ゴミの分別に関するゲームやクイズといったコンテンツを用意して楽しく周知する
・タブレットや専用アプリを活用し収集員の作業効率化につなげる

プレゼン後、富良野市のゴミ収集員から「タブレットを活用して業務を効率化するのは魅力的だが、作業員の負担を考えると現実的ではない」とフィードバックを受けた学生は、「それはどうしてか」と食い下がり、「タブレットをウェアラブル端末に置き換えれば負担にならないのでないか」などと、さらに具体的な提案をしていた。彼らの「本当に実現したい気持ち」が垣間見られた。

次に、データ分析に注力したワインチームのプレゼン内容をお届けする。