早稲田大学は創立150周年を迎える2032年に向けて、2012年度に中期計画「Waseda Vision150」を策定し、教育と研究の質を高め、アジアのリーディング・ユニバーシティーとして世界に貢献する大学を目指す活動を続けている。
その「Waseda Vision150」の中では、早稲田大は教育・研究・就労の場として、ダイバーシティ(Diversity:多様性)の実現に向けて、女性学生数や女性教員数、女性職員数、外国人学生数、派遣留学生、外国人教員の具体的な数値目標を定め、その実現に向けてダイバーシティ推進委員会やダイバーシティ推進室を設置するなどし、活動を進めている。
現在、ダイバーシティ推進室の室長兼ダイバーシティ推進委員会の委員長を務める早稲田大学理工学術院 創造理工学部の所千晴教授にダイバーシティ推進の具体策などについて話を伺った。
--早稲田大が宣言した「Waseda Vision150」では、どのような目標を掲げているのでしょうか
所教授:「Waseda Vision150」では、2032年度時点で女性学生数の比率50%、女性教員数の比率30%、女性教員数の比率50%、外国人学生数(通年)が1万2700人、派遣留学生が7607人、外国人教員が400人などと具体的な数値目標を公表し、その実現に向けて学内ではダイバーシティ推進を進めています。
その過程にある2020年度の実際の在籍比率では、女性学生数の比率37.5%、女性教員数の比率18,4%、女性教員数の比率39.5%、外国人学生数(通年)が8350人、派遣留学生が4580人、外国人教員が234人となっており、具体的な数値を公表しています。
--ダイバーシティ推進を進め始めた経過を教えてください
所教授:「Waseda Vision150」を公表した際に、「男女共同参画・ダイバーシティ推進プロジェクト」を始め、その実現に向けて2016年にダイバーシティ推進委員会を設け、翌年2017年には「早稲田大学ダイバーシティ推進宣言」を公表し「ジェンダー(男女)」「国籍・人種・民族・宗教・文化」「障害」「LGBTQ(SOGI)」という4つの柱を定めています。
2017年7月に公表した「早稲田大ダイバーシティ推進宣言」では、「一人ひとりの多様性と平等を尊重します」と伝えています。「早稲田大ダイバーシティ推進宣言」は、基本方針を示し、さらに例えば教員採用時の申し合わせでは「教員採用・昇進の人事審査では、性別、障害、性的指向・性自任、国籍、エスニシティ、信条、年齢を理由とする、いかなる差別も行わない」と、内外に宣言しています。
--早稲田大ダイバーシティ推進室を設けた経緯を教えてください
所教授:2007年度に「早稲田大学男女共同参画宣言」を公表し、その推進母体となる男女共同参画推進委員会・男女共同参画推進室を設けました。その後2016年に男女共同参画推進委員会をダイバーシティ推進委員会(ダイバーシティ推進室)へ組織改組を行っています。
--男女共同参画推進委員会・早稲田大ダイバーシティ推進室のこれまでの成果を教えてください
所教授:「早稲田大学 UDマップ」というCampus Accessibility Mapはおそらく独自のものだといえます。
早稲田大学には、東京都新宿区西早稲田にある「早稲田キャンパス」、新宿区戸山にある「戸山キャンパス」、新宿区大久保にある「西早稲田キャンパス」、埼玉県所沢市にある「所沢キャンパス」などがあります。各キャンパスづくりを進める際に、ユニバーサルデザインの考えのもとに、だれでも安心して過ごせるように、建物の入り口、そのスロープ・エレベーターなどのバリアフリー情報を地図上で示したものを作成し、公表しています。
このUDマップには、「車いす対応」「だれでもトイレ」「授乳室」などが分かりやすく表示されています。
配慮が必要な人々のために、さまざまな工夫を施し、表示し、注目カ所を紹介しています。実際のマップ作成には、きめ細かい配慮などを文章化しています。だれもが自らの個性と能力を存分に発揮できるキャンパスを目指しています。
また、「SANKAKU NEWS」を半年ごとに発行し、ダイバーシティ推進室の取り組みやニュースの解説などの情報発信を行っています。
例えば、2021年3月発行のNo.25では「座談会 職員の育児休職と育成を考える」という記事で、具体的な中身・実態を解説しています。
筆者注
早稲田大学(Waseda University)は、東京都新宿区戸塚町に本部を置く日本の私立大学で、1920年に設置された。最も古い段階で政府の大学令に基づく大学となった1校。大隈重信が明治14年(1881年)の政変によって下野した後に設立した東京専門学校を前身とする4年制の大学である。現在は、大学院なども設置されている。