さまざまな業種がコロナ渦の影響を受けているが、特に旅行業は大きな打撃を受けた。旅行者自体が減少したことで、ホテルの宿泊者が落ち込んでいるからだ。まん延防止等重点措置がようやく解除されたことで、回復も期待されているが、新型コロナウイルスには慎重に対応する必要があるため、旅行業界でもさまざまな対策を打ち出している。
そうした中、富士通Japanはホテルでの宿泊時に必要となる手続きを非接触・非対面化する取り組みとして、「ノータッチステイサービス」を提供している。同サービスにより、宿泊者はチェックイン時にQRコードを読み込ませるだけで、チェックアウトも含めてレセプションに寄る必要がなく、非対面で宿泊ができる。
今回、この「ノータッチステイサービス」を導入した、広島県尾道市にある尾道国際ホテルを取材した。同ホテルでは、同サービスの導入により、コロナ禍のビジネスをどう進めているのだろうか。
LINEを活用して非接触・非対面の宿泊手続きが可能に
尾道国際ホテルが導入したのは、富士通のホテル業界向けSaaSである「GLOVIA smartホテル」で、そのオプションとして用意されたのが「ノータッチステイサービス」だ。LINEのAPIと連携することで、簡単に利用できる点が特徴だ。
使い方としては、まず尾道国際ホテルのLINEアカウントをLINE上で友だち登録して、ノータッチステイサービスの登録を行う。氏名、電話番号、メールアドレスの登録が必要だ。これを予約の前に行う。
実際に予約をする際は、公式サイトから「ノータッチステイプラン」を選択して予約を行う。このプランで予約をする場合にノータッチステイサービスが利用され、予約情報がLINEの尾道国際ホテルアカウントから確認できるようになる。そこから宿泊前に氏名や住所などの宿泊者情報や、画面上に手書きしての電子署名を登録できる。
この情報は、旅館業法に定められた宿泊者名簿となる。これは元々チェックイン時に手書きで記載していたレジストレーションカードに相当するが、ノータッチステイではこれがスマートフォン上で事前に登録できる。これで、予約手続きは完了だ。
スタッフの教育コストと受付時間の削減にも寄与
続いて、ホテルに到着してからの流れを紹介しよう。チェックイン時はLINEアカウント上でQRコードを呼び出し、チェックインカウンターのQRコードリーダーにかざすだけでチェックインが完了することになる。
現時点では、部屋に入室するためのカードキーが必要なため、スタッフからカードキーを受け取る必要はあるが、チェックインにかかる時間は大幅に削減できる。カードキーの受け取り以外は非接触・非対面であり、コロナ禍における安心感にもつながる。
ちなみに、カードキーの受け取りが必要な点については、旅館業法上、「完全に無人でチェックインするのは問題があると思っている」(尾道国際ホテル支配人の寺岡靖治氏)という判断からだという。
また、チェックイン時に、同時にホテル利用確認のレシートと、予約プランによっては朝食券も同時にレシートプリンターから出力されるため、カードキーと同時に手渡す形になる。これまでは予約確認からレジストレーションカードの記入、朝食券の用意と部屋番号の記入といった作業がなくなるため、スタッフの教育コストも大幅に低減でき、受付時間の削減につながるわけだ。