「こどもちゃれんじ」や「進研ゼミ」などの教育や介護、生活、ヘルスケアなど多岐にわたるサービスを展開するベネッセホールディングス。今回、同社におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の状況について、ベネッセホールディングス グループDX戦略本部 DXコンサルティング室 室長の水上宙士氏に話を聞いた。

  • ベネッセホールディングス グループDX戦略本部 DXコンサルティング室 室長の水上宙士氏

    ベネッセホールディングス グループDX戦略本部 DXコンサルティング室 室長の水上宙士氏

一筋縄ではいかない全社DX

水上氏は、もともとデジタルマーケティングやブランドマーケティングのプランニング、CM制作、PRを担当し、2020年から社長直下の組織としてDXコンサルティング室が設置され、同年から室長を担当している。

同社では、2018年からDXに取り組んでおり、デジタル人材戦略の推進やデジタル開発体制の拡充、デジタルネイティブのオフィス環境整備、R&D・デジタルビジネスモデルの創造など、幅広い範囲でDXの推進を進めていく方針を示していた。

同氏は「事業部門と必ずしも近い立場でDXを進めるという組織体制ではなかったことから、成果が乏しい状況でした。そのため、2019年にまずはデジタル人材の育成にフォーカスして進めました。本質的にDXは“ビジネス変革のためにデジタル技術を活用する”と定義されており、人材だけでなく、そのほかの領域も合わせて進める必要がありました」と振り返る。

続けて、水上氏は「顧客領域が広く、ビジネスモデルもさまざまなベネッセでは、事業によってDXの進捗度合いも課題も違います。事業に沿う形でDX推進を行っていくために、事業部門とともにプロジェクトを立ち上げ、事業のDX課題を解決していくコンサルティング部門を2020年に立ち上げ、当初は5人からスタートしました」と話す。

そもそも、同社がDXに取り組むようになった理由とは何か。その点について、同氏は2つの要因があるという。1つは教育、介護分野などの競合がデジタルやテクノロジーを活用して、売り上げ・シェアの拡大を実現していたため、自分たちも成長しなければならないという外的要因からくる危機意識だ。

そして、もう1つはベネッセの企業理念(=よく生きる)との関連性だ。ベネッセという会社名の意味は「よく生きる」であり、企業理念と同じものとなる。同社では、すべての事業が企業理念と結び付いており、ウェルビーイングを実現していくためにサービスを提供しているという。継続的なサービスの品質向上の手段としてデジタルが必要になるため、よりよいサービス・事業にしていきたいと社員が強く思っていたことから、全社的なDXに取り組むことになった。