早稲田大学(早大)は3月22日、コバルトとインジウムを組み合わせた新規材料を用い、従来に比べて200~300℃低温で、かつ効率良く二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素(CO)に再資源化することに成功したと発表した。
同成果は、早大理工学術院の関根泰教授を中心に、ENEOSの研究者らも参加した共同研究チームによるもの。詳細は、英王立化学会が刊行する化学全般を扱う学術誌「Chemical Communications」に掲載された。
カーボンニュートラル社会の実現に向けた技術の1つとして、CO2の再資源化がある。とはいっても、大気中のCO2濃度は、分子1万個あたり4個程度であり、それを反応させて再資源化することは難しく、例えば化学原料として重要なCOをCO2から作るには、700℃以上という高温な温度条件が必要とされてきたほか、反応を効率良く進めることは難しく、高温に対応できる材料の選定などといったさまざまな制約が存在していたという。
こうした背景から研究チームは、従来手法の延長ではなく、新たな手法を考案し、独自に開発した材料によって、高性能化・低温化を実現させることを目指し、多様な材料を体系的に検討し、その結果、コバルトをインジウム酸化物に修飾した新規材料が見いだされたという。
同材料は、従来の700℃と比べて低温な400~500℃の条件でも、CO2の80%以上を反応させることが可能であることが確認されたほか、その際の反応速度も工業的な要求を十分に満たせるほどの速さ(材料1kgあたり1日に17.7kgのCO2を転換可能)を実現。この際の反応メカニズムも分光法を活用することで、詳細に解明することに成功したともしている。
なお、研究チームは、(1)「ケミカルルーピング」という反応場を分ける手法を編み出し、(2)そのための優れた材料を生み出し、(3)なぜその材料が優れているかを解析。これらのPDCAサイクルによって、高性能化を実現したとしているほか、ケミカルルーピングについては、まだ産業界ではそれほど馴染みのある手法ではないため、今後これを実際に運用していくにあたっての課題を見出して解決していく必要があるとしており、応のサイクルを重ねることによる材料の粉化や劣化をどう抑制するかといった点について、ENEOSとともに検討していくとしている。