2022年2月18日に、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と起業家支援に係る相互協力の覚書を交わした東京農工大学。

今回、同大学の直井勝彦理事(学術・研究担当)・副学長に、東京農工大が進めている大学発ベンチャー企業(スタートアップ)を育成する独自の「TAMAGO」制度について、その概要と狙いなどを聞いた。

  • 東京農工大学の直井勝彦理事(学術・研究担当)・副学長

    東京農工大学の直井勝彦理事(学術・研究担当)・副学長

-- 東京農工大が進めている大学発ベンチャー企業を育成する、TAMAGO制度の概要を教えてください。

直井理事:東京農工大は、大学発ベンチャー企業を育成するTAMAGO制度を2018年度に創設し、1年度当たり3チームを学内から選抜し、東京農工大発ベンチャー企業を増やす活動を精力的に進めています。

この「TAMAGO」制度は前半3年度間と後半2年度間に分けて進めており、前半の3年間は、独自の農学・工学を融合する挑戦的な研究開発から事業化に向けたプロトタイプづくりなどを進める期間としました。

  • 東京農工大の「TAMAGO」制度の模式図

    東京農工大の「TAMAGO」制度の模式図

農工融合による先駆的、学際的、創発的な研究チームが研究開発を進めるチームとして、2018年度には、研究代表者として直井教授(工学研究院応用化学部門)が率いる「植物から電気を得る植物電池」と、高田秀重教授(農学研究院物質循環環境科学部門)研究代表者が率いる「マイクロプラスチック総合科学研究チーム」、寺田昭彦教授(工学研究院応用化学部門)研究代表者が率いる「窒素・リンアップサイクリングチーム」の3チームが採択されました。

その後も年度ごとに、農学研究院と工学研究院の代表研究者1人ずつが融合した研究チームを3組選び、学際的な研究開発テーマの研究を推進しています。

各融合研究チームには1年度当たり400万円が研究開発費として支給されます。そして、原則3年度後に、日本学術振興会の科学研究費助成事業の「学術変革領域研究(A・B)」や科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業の「CREST」などの研究開発費を申請し、さらに育てた、その研究開発内容を深める道を目指しています。

-- 「TAMAGO」制度の後半はどのような内容になるのでしょうか。

直井理事:TAMAGO制度の後半部に当たる4年度目からは、TAMAGO制度の後半として“ギャップファンド”部分に進みます。

ここからがいわゆる“スタートアップ育成支援”制度になります。前半3年間を終えた各農工融合チームに大学発ベンチャー企業(スタートアップ)創業に向けた意向を確認し、後半の2年間に進みます。ここに進んだ各農工融合チームは、1年度当たり研究開発費400万円の支援を受けます。

この後半の2年間には、東京農工大が委託したスタートアップ育成の有識者からビジネスプランを作成する助言を受けます。さらに、この2年間の中で、農工大の事業性評価委員会の評価を受けて、ビジネスプランのブラシュアップを進めます。

また、東京都中小企業振興公社が運営する創業支援施設であるTOKYO創業ステーションに相談するなどの助言も受けます。TOKYO創業ステーションの事業可能性評価委員会に申請し、その評価を受けるように薦めています。

-- TAMAGO制度で採択された各農工融合チームの進捗度やその時点での成果の公表はどのようになっているのでしょうか。

直井理事:2018年度から始まったTAMAGO制度の前半3年間の研究成果を適時、発表しています。2020年に入って、運悪く新型コロナウイルス感染症の流行のため定期的な成果報告会は、結果的に臨機応変に開催する形になっています。

例えば、2021年3月16日にオンラインで開催した「東京農工学×東北大学 農工融合シンポジウム」の中で、東京農工大のTAMAGO制度に2018年度に採択された3チームの研究開発成果などを公表しています。

  • 2021年3月16日にWeb開催した「東京農工学×東北大学 農工融合シンポジウム」の中で発表された東京農工学の研究開発成果の一部

    2021年3月16日にオンラインで開催した「東京農工学×東北大学 農工融合シンポジウム」の中で発表された東京農工学の研究開発成果の一部

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