FRONTEOは2月17日、建設・製造現場の事故や災害リスクの発見と予測を行うAIシステム「WordSonar for AccidentView(ワードソナーフォーアクシデントビュー)」を発表した。同日には記者発表会が開かれ、同ソリューションの特徴が紹介された。

「WordSonar for AccidentView」では、建設・製造企業が日常業務で利用している日報や作業報告書、事故報告書などの内容を教師データとして利用する。教師データを基に、AI(人工知能)が作業現場の危険要因を分析し、事故発生リスクの高さや事故防止のために注意すべき要因を事故発生の数日前に予測することができる。利用料金は個別見積もりとなる。今後、FRONTEOは他の業界でもWordSonarをシリーズ化して展開していくという。

  • 「WordSonar for AccidentView」の利用イメージ

AIにはFRONTEOが開発した自然言語解析AIエンジン「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」が利用されている。これまで、「Concept Encoder」は医療分野において、医学論文や医療情報を解析しての診断支援や創薬に活用されてきた。2020年には看護記録を読み込ませ、転倒・転落の可能性がある患者を7日前に予測するAIプログラム「Coroban」を開発し、一部の病院で導入している。「WordSonar for AccidentView」では「Coroban」で培ったリスク評価の技術とノウハウが応用されているという。

「WordSonar for AccidentView」の開発責任者であるライフサイエンスAI CTOの豊柴博義氏は、「大量のデータをAIが分析することで、現場管理者や作業者のリスクアセスメントや日報の確認・集計作業の負担を軽減し、個人の主観や知識の影響を受けない客観的かつ網羅的なリスク判断が可能となる」と同ソリューションの利点を説明した。

  • FRONTEO ライフサイエンスAI CTO 兼 ニューロ言語化学研究所 所長 豊柴博義氏

例えば、「WordSonar for AccidentView」を利用することで、建設現場の安全管理責任者なら現場のタイプごとに将来のリスク傾向をチェックできる。現場責任者向けには、個別の現場ごとのリスク度合いも示すことが可能だ。

  • 安全管理責任者向け機能の利用イメージ

また、現場の担当者には、日常業務で使用しているPCだけでなく、モバイルアプリに注意文言を送ることで注意喚起なども行える。

  • 現場担当者向け機能の利用イメージ

テキストをデータ化する際は、日報や報告書を管理するシステムと連携したり、各書類のデータをFRONTEOに提出したりするほか、手書きの書類はOCR(光学文字認識)などで読み込むする必要がある。「日報のテキストデータを自動で取り込んで、その内容を基に翌日予測結果を出して、現場で閲覧するといった運用が考えられる」と豊柴氏。

「Concept Encoder」は分散表現型のAIエンジンとなり、テキスト情報をベクトル化して解析することでデータの網羅的な解析が可能になるという。その結果、「WordSonar for AccidentView」では類似キーワードをグループ化して、単語だけでなく、文章から近い意味合いのテキストデータを検索することができる。

「WordSonar for AccidentView」に登録された過去の作業内容や事故事例などは、色分けした点でマップ上にプロットされる。それぞれの点をクリックすることで、事故などの詳細な内容を見ることができるだけでなく、ユーザーが単語や文章で検索することで、AIが関連した事故事例を抽出して強調表示してくれる。

  • 作業内容や事故事例はマップ上でプロットされる。左下の赤やグレーの点が強調されたデータ(説明会のデモ画面)|

検索ワードに関連する事故の発生確率はレーダーチャートで表示することも可能だ。説明会ではシステムのデモが行われた。「雨の中でのクレーン作業」と検索すると、「激突」「はさまれ・巻き込まれ」などの関連する事故とその確率が表示された。

  • レーダーチャート(説明会のデモ画面)

検索内容を基にリスク対策をレコメンドする機能もある。例えば、「転倒・転落」で検索すると、「結露」「整理」「安全帯」など、リスクへの対策につながるキーワードが表示される。

また、検索ワードと強調されたデータの関連性が低い場合は、ユーザー側で関連性をAIに再学習させることもできる。

  • 「選んだデータから教師設定」機能から「該当なし」を選択することで、AIへ再学習させることができる

「WordSonar for AccidentView」では、日報などの日々の業務で蓄積されるデータに加えて、気象データや季節性データ、地域データなどさまざまな外部データも取り込みながら解析を行うこともできる。そのため、豊柴氏は「現場の状況の変化に対応してリスクレベルの評価や、作業者への適切な注意喚起が行える」と語った。