TrendForceによると、2020年から2025年にかけて世界のトップ10ファウンドリの半導体生産能力は年平均成長率(CAGR)10%(300mmウェハ換算)ほどで、多くのファウンドリは300mmウェハの生産能力拡充に焦点を当てているという。
そのため、300mmウェハの生産能力のCAGRは約13.2%と高いが、200mmウェハに関しては、新規の製造装置を開発・製造するメーカーが少なく、中古の製造装置も入手困難な状況となっており、かつ200mmウェハによる生産能力拡張の費用対効果が小さいことなどから、ほとんどの200mmウェハファブで生産能力は拡張を行わないため、CAGRは3.3%に留まるとしている。
一方で需要として、主に200mmmウェハで製造されているPMIC(パワーマネジメントIC)やパワーディスクリート半導体製品が、電気自動車(EV)、5Gスマートフォン、サーバーなどを中心に伸びており、2019年下半期以降、供給不足に陥っている。こうした状況を踏まえ、半導体メーカー各社は、200mmウェハで生産してきた一部の製品について300mmで生産する方向にシフトし始めているが、実際に200mmウェハによる生産能力の不足を効果的に補うためには、より多くの主流製品が300mmウェハでの生産に移行する必要があろ、その時期についてTrendForceでは、2023年後半から2024年にかけてと推測している。
300mmへの移行が進むPMICとオーディオコーデック
現在、200mmウェハで製造されている主な製品としては、大型ディスプレイパネルのドライバIC、CMOSイメージセンサ(CIS)、MCU、PMIC、パワーディスクリート(MOSFET、IGBTを含む)、指紋認証IC、タッチセンサIC、オーディオコーデックなどがあるが、その中でもオーディオコーデックといくつかのPMICについては300mmウェハへと移行させていく計画がある。
例えばPMICに関しては、すでに300mmウェハ/55nmプロセスで製造されているApple iPhone向けの特定PMICを除いたほとんどの製品がまだ200mmウェハで0.18〜0.11μmプロセスを採用して製造されている。その結果、MediaTek、Qualcomm、Richtekなどのメーカー各社は、長期的な供給不足に頭を抱えており、一部のPMICを300mmウェハで90~55nmプロセスを用いて生産することを計画している。ただし、製品プロセスの変更には新たな開発と検証が必要であること、ならびに90~55nm BCD(バイポーラ・CMOS/DMOS)プロセスの現在の総生産能力は限られていることなどから、こうしたPMIC製品が300mmウェハで生産されるのは2024年ころと見られ、そのころにならないと不足は解消されない見込みだという。
一方のオーディオコーデックに関しては、ノートPC用オーディオコーデックが200mmウェハで主に製造されており、RealTekが主なサプライヤとして知られている。2021年上半期は、生産能力が足りずにリードタイムが遅れ、ノートPCそのものの出荷にも影響を及ぼすこととなった。ティア1クラスの一部の顧客は下半期も順調に仕入れができたというが、中小規模の顧客の中には入手困難な製品もあったという。現在、RealTekはSMICと提携し、ノートPC向けオーディオコーデックのプロセスを従来の200mmウェハから300mmウェハ/55nmプロセスへの移行を進めており、2022年半ばにも大量生産へと移行するものと予測され、この動きによりオーディオコーデックの供給が改善することが期待されている。
このほか、同じく200mmウェハの主流製品の1つである大型パネル向けドライバICについては、ほとんどの製品がまだ200mmウェハベースであるが、Nexchipは300mmウェハ/0.11~0.15μmプロセスでの製造に切り替えを進めており、これにより供給がスムーズに行われるようになってきたという。TrendForceは、これは特殊なケースであり、ほかのメーカーの大型パネル向けドライバICが300mmウェハへ移行するという動きはほとんど見られないとしている。