森林研究・整備機構 森林総合研究所、総合地球環境学研究所、大阪府立環境農林水産総合研究所の研究グループは、森林などの陸域に生息するトビムシをはじめとした土壌生物の多くの分類群が、落葉分解者として機能しているわけではないことを明らかにした。
なお、同研究の詳細は学術雑誌「Biology Letters」のオンライン版で公開されている。
同研究はトビムシの食物源が、落葉などの枯死有機物、あるいは藻類や植物などの生きた有機物どちらに依存しているのかを明らかにするために行ったという。
これまでは、トビムシなどの約1mm以下の微小無脊椎動物の観察や分析は困難であったが、今回、放射性炭素同位体分析によって微小生物の餌炭素年齢を測定することができた。
その結果、食物網起点付近に位置するトビムシが、枯死有機物ではなく光合成されて間もない炭素を食していることが明らかになった。炭素・窒素安定同位体比(δ13C・δ15N)の分析結果を含めると、多くのトビムシが菌根菌の摂取により炭素を得ていることが推察された。
上図では、各点の色が14C濃度(Δ14C)の値を示している。土壌表層(新規落葉からなる層)の枯死有機物の値を基準(白)に、高い値(古い)を青、低い値(新しい)を赤で示している。
トビムシ目のうち、イボトビムシ、ヒメトゲトビムシ、アヤトビムシ、トゲトビムシ、ヨツトゲツチトビムシは土壌表層性の種で、その他は土壌性の種。
また、クモなどの捕食者の体も、枯死有機物よりも新しい炭素から成り立っていることがわかったことで、トビムシの食性が土壌食物網全体に大きく影響を及ぼしているということが確認された。
これらの成果は、落葉などの枯死有機物が土壌食物網を通じて分解されているというこれまでの定説を覆す発見だという。
同研究では、これまで分解者として認識されていた土壌動物の多くの分類群は、実は消費者側に位置づけられることが明らかとなった。それにより生態系における生物機能を、十分な根拠なく判断することの危険性も示された。
また、研究チームは今回はトビムシ以外の土壌生物の多くを一括に扱ったため、土壌における生物多様性と機能を正確に評価するためには他の分類群についても分析が必要であるとした。