アドビは1月20日、同社のブログにて2022年にマーケターの成功を左右する5つの予測とポイントを発表した。これは、同社が2021年に実施した「未来のマーケティングに関するグローバル調査」の結果を基にした予測とのことだ。

1点目の予測は、マーケティングリーダーの責務の拡大だ。特にここ数年は顧客第一主義が非常に重要とされており、優れた顧客体験を提供するためには社内の複数の部署が協力し合う必要がある。そうした中でマーケティング部門が負う責任が増しているとのことだ。

同社の調査によると、マーケターの85%が過去5年間で自身の責任範囲が平均37%増加したと回答した。新規顧客獲得や顧客体験デザインなどが求められるようになっており、77%が今後12カ月から18カ月の間に責任範囲が3分の1以上増加すると予想している。

マーケティングの領域は拡大しているだけではなく、根本的に変化しているという。マーケターの成功は単にリード数だけでなく、包括的な顧客関係をいかにサポートするかで決まるとのことだ。同社は、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)をパフォーマンス指標に限定するのではなく、生涯価値のようなカスタマーサクセス指標も含めることで、人材とリソースを顧客に集中させるよう指摘している。

2点目として、顧客からの「信頼」の獲得において最も手強い存在となるのはZ世代(18歳から25歳)だと予測している。デジタル技術によってブランドと消費者の信頼関係の構築または喪失に影響を与える要因が増えている中、同調査にZ世代の40%が「信頼が損なわれたときに否定的なレビューを投稿する」と回答するなど、一度信頼を損なうと強硬な行動をとることが示されたのだという。Z世代の75%が過去1年間に信頼を失ったことでブランドを放棄したことがあると答え、さらに29%が3つ以上のブランドを放棄していたとのことだ。

同社は、Z世代との信頼関係を築くには、パーソナライズされた体験を通じて顧客が本当に必要としていることに企業が共感を示すべきとしている。加えて、優れたクリエイティブやコンテンツがZ世代との信頼関係構築に役立つとのことだ。

3点目の予測は、大規模なパーソナライゼーションが最大の差別化要因なり得ることである。先進的な企業はAI(artificial intelligence:人工知能)を活用して顧客ごとにジャーニーをWebブラウザ経由で提供したり、オンラインとオフラインの両方の行動に基づいたサービス提供を実施したりしている。

パーソナライゼーションが高度化する中で、今回の調査では95%のマーケターがパーソナライズされた優れた顧客体験を「できている」「卓越してできている」と回答した。しかし、過去1年間でデジタル体験が良くなったと回答した生活者は37%にとどまり、63%は「変わらない」「悪化した」と回答している。31%の消費者は、どのような種類のパーソナライゼーションにも価値を認めていないことが明らかになっている。

そこで同社は、許諾済みのファーストパーティデータに基づいて統一された顧客データプロファイルを作成し、消費行動のライフサイクル全体にわたって顧客を一元的に把握する必要があるとしている。「マーケティング部門の責任者は、2022年の最優先事項として、この課題に取り組むべき」とのことだ。

4点目はデータガバナンスの統合が必須になるとの予測だ。マーケターは個人情報に関する法規制や、顧客が求める個人情報取り扱いへの対応が求められる。企業のあらゆるレベルのマーケターはコンプライアンスに準拠しながら大規模な顧客体験を提供する必要があり、そのための唯一の解が「強力なデータガバナンス体制の構築」なのだという。

デジタル時代の到来と拡大に伴って、優れた人材やポリシーだけでは顧客体験とデータ要件のスピードに追いつけなくなっている。優れたデータガバナンスを提供するために、統合化されたガバナンスツールを使ってポリシーや顧客の選択を自動化するのがポイントだと同社は指摘している。これによって、従業員の負担を軽減しながらもより良い顧客体験を提供し、コンプライアンスを維持できるとのことだ。

最後の予測は「一人ひとりの能力を強化するテクノロジーの進化により、従業員の参加意識が向上する」だ。マーケターの75%が「今後数カ月の間にマーケティング部門で新たな退職希望者の波が来る」と予測しており、48%が「個人的に仕事を辞めるつもりである」と回答した調査があるという。多くの企業はこの問題に対し、企業側は社員の休暇を増やすとともに柔軟な勤務体系やメンタルヘルスサポートを提供することで対応しているようだが、課題の直接的な解決ではない。

そこで同社は、従業員の参加意識を高めるためには専門的な能力開発や個人的なサポートプログラムに加えて、従業員に必要なテクノロジーが行き渡っているかどうかが重要であるとの見解を示している。適切なテクノロジーの提供は手作業などの煩雑な業務を軽減し、チーム内外の協働を促進するとのことだ。